「今、それぞれの平成グッズについてAIに聞いていたのよ。写真をアップして、“この文房具の製造会社と製造年を教えてください”って。知っている会社名がいくつか出て来たんだけど、その中によく分からない会社名が混じってた。その会社が製造したのが——」
「これとこれとこれ」と、はーちゃん先生が交換ノート、メモ帳、マジックライトペンを指差した。
「ほら、AIの回答を見てみて」
差し出されたはーちゃん先生のスマホの画面には、最近流行りのAIチャットとの会話のやりとりが映し出されていた。はーちゃん先生がいつのまにか送っていた翠ちゃんの平成女児グッズたちの写真と、製造会社、製造年、原産地の三つの項目についてのAIの回答が画面に映っている。
オレンジ株式会社やヒノキジャパンはなんとなく聞いたことのある文房具メーカーの会社名だが、はーちゃん先生が指し示した三つの文具についての回答は、確かに不可解なものだった。
「⬛︎⬛︎株式会社? 2005年……?」
そう。社名のところに伏字のような⬛︎⬛︎が入っていて、しかも製造年が2005年になっている。他の文具は2022年〜2026年の製造にもかかわらず、どうしてこの三つの文具は二十一年も前の製造年が表示されているのだろうか。
「2005年ってどういうことですか? わたし、まだ生まれてませんよ?」
翠ちゃんも、さすがに不思議に思ったのか、首を傾げながらはーちゃん先生を見つめた。十一歳の翠ちゃんはもちろん、十四歳の私だって2005年にはまだ生まれていない。
だけど、翠ちゃんが持って来た平成女児グッズは、中古のようには見えない。間違いなく新品である。もちろん、翠ちゃんが使っているのである程度は使用感が出ているものの、二十一年も前に製造されたものだとは思えなかった。
「不思議よね。私も、どういうことなのか分からなくて混乱してる。翠ちゃん、この文房具は間違いなくお店で買ったものなのよね?」
「はい。一ヶ月くらい前に、ここにある文房具たちは全部、お母さんと『きらめきショップ』で買いました。いや……ちょっと待ってください」
言いながら途中で、翠ちゃんが記憶を探るように顎に手を当てて何かを考え始めた。
「きらめきショップ」とは、翠ちゃんの通っている岡崎北小学校の近くにある小さな文房具屋さんのことだ。私も小学生の頃よく通っていた。
時計の針の音が静かな空間に響き渡る。
私もはーちゃん先生も、翠ちゃんの次の言葉を待った。
「交換ノートとメモ帳とマジックライトペンは、『きらめきショップ』で買わなかったような気がする……」
「それ、本当なの?」
「た、たぶんですけど……。全部一緒のタイミングで買ったと思ってたんですが、違った……かも」
翠ちゃん自身、記憶が定かではないというふうにあやふやな答えだった。
「それなら、この三つの文具はどこで買ったのかな?」
私は思わず聞いた。
「それが、思い出せないの……。どこで買ったんだろ……。お母さんなら知ってるかな。お母さんが勝手に買ってくれた……んだっけ。でもおかしい。うちのお母さん、わたしが“ほしい”って言ったものしか基本的に買ってくれないのに……」
だんだんと、翠ちゃんの声が不穏な色を帯びていく。
まるで、昨日のりおさんのように、挙動不審に視線を動かしながら頭を抑える姿に、私は「もういいよ」と翠ちゃんの背中をさすった。
「これとこれとこれ」と、はーちゃん先生が交換ノート、メモ帳、マジックライトペンを指差した。
「ほら、AIの回答を見てみて」
差し出されたはーちゃん先生のスマホの画面には、最近流行りのAIチャットとの会話のやりとりが映し出されていた。はーちゃん先生がいつのまにか送っていた翠ちゃんの平成女児グッズたちの写真と、製造会社、製造年、原産地の三つの項目についてのAIの回答が画面に映っている。
オレンジ株式会社やヒノキジャパンはなんとなく聞いたことのある文房具メーカーの会社名だが、はーちゃん先生が指し示した三つの文具についての回答は、確かに不可解なものだった。
「⬛︎⬛︎株式会社? 2005年……?」
そう。社名のところに伏字のような⬛︎⬛︎が入っていて、しかも製造年が2005年になっている。他の文具は2022年〜2026年の製造にもかかわらず、どうしてこの三つの文具は二十一年も前の製造年が表示されているのだろうか。
「2005年ってどういうことですか? わたし、まだ生まれてませんよ?」
翠ちゃんも、さすがに不思議に思ったのか、首を傾げながらはーちゃん先生を見つめた。十一歳の翠ちゃんはもちろん、十四歳の私だって2005年にはまだ生まれていない。
だけど、翠ちゃんが持って来た平成女児グッズは、中古のようには見えない。間違いなく新品である。もちろん、翠ちゃんが使っているのである程度は使用感が出ているものの、二十一年も前に製造されたものだとは思えなかった。
「不思議よね。私も、どういうことなのか分からなくて混乱してる。翠ちゃん、この文房具は間違いなくお店で買ったものなのよね?」
「はい。一ヶ月くらい前に、ここにある文房具たちは全部、お母さんと『きらめきショップ』で買いました。いや……ちょっと待ってください」
言いながら途中で、翠ちゃんが記憶を探るように顎に手を当てて何かを考え始めた。
「きらめきショップ」とは、翠ちゃんの通っている岡崎北小学校の近くにある小さな文房具屋さんのことだ。私も小学生の頃よく通っていた。
時計の針の音が静かな空間に響き渡る。
私もはーちゃん先生も、翠ちゃんの次の言葉を待った。
「交換ノートとメモ帳とマジックライトペンは、『きらめきショップ』で買わなかったような気がする……」
「それ、本当なの?」
「た、たぶんですけど……。全部一緒のタイミングで買ったと思ってたんですが、違った……かも」
翠ちゃん自身、記憶が定かではないというふうにあやふやな答えだった。
「それなら、この三つの文具はどこで買ったのかな?」
私は思わず聞いた。
「それが、思い出せないの……。どこで買ったんだろ……。お母さんなら知ってるかな。お母さんが勝手に買ってくれた……んだっけ。でもおかしい。うちのお母さん、わたしが“ほしい”って言ったものしか基本的に買ってくれないのに……」
だんだんと、翠ちゃんの声が不穏な色を帯びていく。
まるで、昨日のりおさんのように、挙動不審に視線を動かしながら頭を抑える姿に、私は「もういいよ」と翠ちゃんの背中をさすった。



