きらきらでかわいいまっしろ

「すみませんっ」

 しゃがみながらスマホに手を伸ばす。
 その刹那、どこからともなく妙な視線を感じた。 
 まるで、私の一挙手一投足をじっと監視しているような。
 スマホを掴み、周囲を見回す。
 誰も、私に注目している人なんていない……。
 強いて言えば、様子を窺うはーちゃん先生と、座席に座っている翠ちゃんがこちらを見ているのは分かるけれど。私がさっき感じたのはもっと得体の知れない第三者からの視線だ。

「茉白ちゃん大丈夫?」

 しゃがんだまま動かない私に、はーちゃん先生が心配そうにそう聞いた。ちょうど、車内アナウンスで、「間もなく横浜です、横浜です」と目的地を告げる声が頭上から降ってきた。

「だ、大丈夫です」

 私は立ち上がり、スカートの裾を正す。念のためきょろきょろともう一度周囲を確認してみたが、誰も目が合う人はいなかった。
 気のせい……だよね?
 どくり、と一度大きく心臓が跳ねたのに気づかないふりをした。
 同時に、電車が横浜駅へとたどり着いた。
 多くの人に揉まれながら電車を降りると、肺いっぱいに外の空気を吸い込む。

「はーっ。ちょっと息苦しかったわね」

「はい。タイミングよく降りられて良かったです」

 私が思わずそう答えると、はーちゃん先生が「なにがタイミング良かったの?」と聞き返してきた。

「あ、いえ、なんでもありません」

 変な視線を感じたから早く降りたかった——なんて言っても、心配をかけるだけだ。妄想がひどいやつだと思われても嫌だし。

「わたしだけずっと座っちゃってすみません」

「いや、いいんだよ。小学生をずっと立たせるほうが心苦しいから」

 終始申し訳なさそうだった翠ちゃんに、私もはーちゃん先生も手をひらひらと横に振った。

「『りお』さんとの待ち合わせまであと十五分ぐらいしかないわね。急ぎましょう」

 先生にそう言われて時計を見ると、確かに彼女との待ち合わせ時刻である十一時まで、そんなに時間がなかった。
 待ち合わせ場所は駅から徒歩五分の場所に位置するチェーンのカフェだ。
 時間的にお腹も空いてきたところなので、そこでお昼ご飯を食べつつ、話ができたらいいと思っている。
 私は翠ちゃんと仲良く手を繋いで、目的のカフェまでいそいそと歩き出した。