きらきらでかわいいまっしろ

「陰湿ないじめね……。それにしても、“まっしろ事件”、か」

 まっしろ、という言葉を口にすると、はーちゃん先生は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
 私も、「まっしろ」と言うだけでもう背中に冷気が吹き付けられたような心地になる。できるだけ口にしたくないのに、実里ちゃんの真相に近づけば近づくほど、「まっしろ」が追いかけてくるような気がするのだ。

「そういえば私が子どもの頃は、ラインパウダーは触ると身体に良くないから、肌に触れたらよく洗うように言われていたわ」

 はーちゃん先生が思い出したように言う。

「ネットの記事にも同じようなことが書いてありました。そういえば、2005年とか2006年って、ちょうど先生が小学生だった時代じゃないですか?」

 先生は2026年の今年で30歳を迎えると聞いている。
 ということは、逆算すると2005年の時点で9歳——小学3年生だったはずだ。

「ええ、確かにそうね。年代と学年をあんまり覚えてないけど計算するとそうだわ」

 先生より少し年上の生徒だった女の子がラインパウダーを振り掛けられて自殺するなんて痛々しいニュースは、先生自身もあまり聞きたくないことだっただろう。

「というか、当時もこのニュースやってたような気がする。子どもだったからあんまり覚えてないけど……でも確か、このラインパウダーの原料が問題視されて、別の原料のものに変えるようになったんじゃないかしら」

 先生の言葉に、私は「ラインパウダー 変遷」と検索をかけてみる。

「本当だ。“2007年を境に、文部科学省の指導により消石灰が学校では使用されなくなりました”って書いてあります」

 私は、ラインパウダーの変遷について書かれたPDF資料を先生に見せた。
 そこには2007年以降、水酸化カルシウムを原料とする消石灰ではなく、炭酸カルシウムを原料とするパウダーに変わっていったという内容が記されていた。

「時代が変わればいろんなものが変わっていって当然よね。ラインパウダーも、健康被害が少ないものに変わったのはいいことだと思う。でもこの2005年に亡くなった女の子はお気の毒だわ……」

 むしろ、この事件がきっかけでラインパウダーの原料が変わったのかもしれないけれど、とはーちゃん先生は付け加える。

「事件が起こった後に改善されても、その事件に巻き込まれた人間はただの犠牲ってことになりますもんね」

 思ったことを率直に口にする。
 世の中ではいろんな事件や事故が起こって、その度にいろんな人たちが制度やルールを改善していくけれど。元の事件の犠牲者のことを、どうしても考えてしまうのだ。

「このネットの記事で、“まっしろ”ってところも気になったんですけど、『女子生徒が好んで見せ合いや交換をするファンシーな柄の文房具をめぐって、被害者である女児とだけわざとらしく文具の交換等をしないという嫌がらせが何度も行われていた』って書いてあるのも気になったんですよね」

 私ははーちゃん先生に、「2005年 まっしろ事件」の記事を見せた。
 そのとき、電車が一際大きくガタンと揺れた。立っている乗客が同じ方向へ身体を傾ける。私は思わずスマホを落としてしまう。