きらきらでかわいいまっしろ

「さっきのは、なんだったんだろ……」
 
 一番震えている翠ちゃんが、すがるように呟いた。
 私もはーちゃん先生も、何も答えを出すことができない。実里ちゃんのお母さんは、見た目こそ普通の優しいお母さんだったが、彼女の中には明らかに普通の人間ではない何か(・・)の気配がした。それを怪異と呼んでしまったら、もう後戻りできないような気がした。

「分からないわね……。でも、実里ちゃんが学校を休んでいるのが、実里ちゃんの独断ではないってことは分かるわ」
 
「そうみたいですね……。お母さんも公認で休んでるんだと思います。それとも、お母さんに無理やり……」

 推測したことを言葉にすると、「おえっ」とえずきそうになった。
 あの怪物じみた母親が実里ちゃんを無理やり家に閉じ込めているのだとしたら、実里ちゃんを救い出さなくちゃいけない気がする。でも、肝心の実里ちゃんの気配が、あの家からは感じられないのだ。中を見たわけではないのではっきりとは言えないけれど、私の中の勘が、あそこに実里ちゃんはいない(・・・・・・・・・・・・・)と告げていた。
 
「ぎゃくたい、なんでしょうか」

 翠ちゃんが物騒なワードを口にする。でも実際それは私も一瞬考えたことだ。
 私は首を捻り、はーちゃん先生は「どうかしらね」と答えた。

「虐待というより、お母さんも一緒におかしくなっちゃったって考えるほうが先生はしっくりくるの」

 はーちゃん先生の魂の抜けたような言葉に、翠ちゃんがはっと瞳を揺らした。私も先生の意見にどうも納得してしまう。
 虐待なんて人為的な悪意ではない。あそこにあるのは、もっと生々しくて人間が介入できないような、悪の気配。表面上は幸せそうに見える家庭の中で起きている、非日常。そんな感じがしたのだ。

「実里ちゃんのお母さん……浦田先生と、同じこと言ってた……」

「あの、“まっしろでだいじょうぶ”って言葉だよね?」

「うん……。“まっしろでだいじょうぶ”って、なんなんだろう。わたしがこの前見た実里ちゃんの白い影と関係がありそうだけど、何がどう大丈夫なのか、全然わかんないっ」

 翠ちゃんはまるで小さな子どもがイヤイヤをするように、激しく首を横に振った。

「翠ちゃん。ちょっとあっちの公園で休憩しましょうか」

 見かねたはーちゃん先生が、翠ちゃんの背中を支えながらそう提案してくれた。先生の視線の先には、確かに小さめの公園があった。

「……はい」

 先生の心遣いに、翠ちゃんが小さく頷く。私も、ちょっと頭の中を整理したいと思っていたので、先生の提案は正直ありがたかった。
 先生と私で翠ちゃんを支えるようにして公園まで歩いていく。公園の中には二つベンチがあって、そのうちの一つに並んで腰掛けた。 
 砂場で遊んでいる子どもたちが、三人いた。両親と思われる男女が二人、もう一方のベンチに座っている。
 平和な休日の昼下がりの光景を尻目に、ベンチに座った私たちはどっと息を吐き出した。