すっかり会話が弾んで、翠ちゃんの表情も本来の明るい彼女のものに戻っていた。私たち三人の足取りは軽い。空には抜けるような青が広がっていて、流れていく雲が私たちをじっと見守ってくれているようだった。
「ここです」
やがて、一軒の戸建て住宅の前で、翠ちゃんは立ち止まった。
白い壁をした、そこそこ大きな家だったので驚く。玄関の前にはちゃんと門まで付いていて、門のすぐ近くに植木鉢の花が飾られていた。きちんとしていて綺麗な家だという第一印象を受けた。
表札には「山田」とあって、本当にここが実里ちゃんの自宅なのだと実感した。
翠ちゃんの身体は僅かに震えている。きっと、この間の日曜日にこわい思いをしたことを思い出しているのだろう。はーちゃん先生が翠ちゃんの背中を優しくさすりながら、「おうちの方、いるかな」とつぶやいた。
「一階は電気がついてそうだよ。二階は……カーテンが閉まってるね」
私の言葉に、はーちゃん先生と翠ちゃんが同時に上を見上げた。二階の実里ちゃんの部屋と思しき部屋の窓にはピンクの花柄のカーテンが引かれている。電気がついているのかどうか、分からなかった。
「とにかくインターホンを鳴らしてみましょう」
約束もなしに突然押しかけて大丈夫だろうか、と今更不安になったものの、クラスメイトの翠ちゃんがいるからなんとかなるか、と気を強く持ち直す。
はーちゃん先生がインターホンに触れると、ピンポーンという軽快な音が響いた。
ドキドキしながら待っていると、すぐにインターホンから声が聞こえてきた。
『はい』
女の人の声だ。きっと実里ちゃんのお母さんだろう。私たちは三人で顔を見合わせて、同時にごくりと喉を鳴らす。はーちゃん先生がすっと息を吸う音が聞こえた。
「突然押しかけてすみません。私、実里ちゃんのクラスのお友達の羽沢翠ちゃんのピアノ講師をしております、福原葉月と申します。翠ちゃんが、ずっと学校をお休みされてる実里ちゃんのことが心配で、実里ちゃんに会いたいと言っているのですが、お会いできますでしょうか?」
はーちゃん先生は丁寧な言葉遣いで、こちらが伝えたいことを端的に話してくれた。
はーちゃん先生の言葉を聞いた実里ちゃんのお母さんは、少しの間沈黙していた。突然押しかけてきた私たちを、娘に会わせるべきか考えているようで、沈黙が居たたまれなかった。怪しい者ではないのに、値踏みされているような気がして身体がきゅっと縮こまる。
それは翠ちゃんも同じだったようで、唇を結んで固い表情をしていた。
しかし、私たちの心配とは裏腹に、しばらくするとガチャリと玄関の扉が開かれる音がした。てっきりインターホン越しに何かを言われると思っていたので、いきなり扉が開かれて身体がぴくんと跳ねる。
ザ、ザ、と足音を踏み鳴らして、一人の女性が門の前まで近づいてきた。その間も、得体の知れない不安が止まらなくて、私は翠ちゃんの肩を抱きながら激しくなる鼓動が収まるのを待っていた。
実里ちゃんのお母さんが、門の前に立った。鍵の開く音がした後、ギィ、と黒塗りの門が内側から開かれる。
「ここです」
やがて、一軒の戸建て住宅の前で、翠ちゃんは立ち止まった。
白い壁をした、そこそこ大きな家だったので驚く。玄関の前にはちゃんと門まで付いていて、門のすぐ近くに植木鉢の花が飾られていた。きちんとしていて綺麗な家だという第一印象を受けた。
表札には「山田」とあって、本当にここが実里ちゃんの自宅なのだと実感した。
翠ちゃんの身体は僅かに震えている。きっと、この間の日曜日にこわい思いをしたことを思い出しているのだろう。はーちゃん先生が翠ちゃんの背中を優しくさすりながら、「おうちの方、いるかな」とつぶやいた。
「一階は電気がついてそうだよ。二階は……カーテンが閉まってるね」
私の言葉に、はーちゃん先生と翠ちゃんが同時に上を見上げた。二階の実里ちゃんの部屋と思しき部屋の窓にはピンクの花柄のカーテンが引かれている。電気がついているのかどうか、分からなかった。
「とにかくインターホンを鳴らしてみましょう」
約束もなしに突然押しかけて大丈夫だろうか、と今更不安になったものの、クラスメイトの翠ちゃんがいるからなんとかなるか、と気を強く持ち直す。
はーちゃん先生がインターホンに触れると、ピンポーンという軽快な音が響いた。
ドキドキしながら待っていると、すぐにインターホンから声が聞こえてきた。
『はい』
女の人の声だ。きっと実里ちゃんのお母さんだろう。私たちは三人で顔を見合わせて、同時にごくりと喉を鳴らす。はーちゃん先生がすっと息を吸う音が聞こえた。
「突然押しかけてすみません。私、実里ちゃんのクラスのお友達の羽沢翠ちゃんのピアノ講師をしております、福原葉月と申します。翠ちゃんが、ずっと学校をお休みされてる実里ちゃんのことが心配で、実里ちゃんに会いたいと言っているのですが、お会いできますでしょうか?」
はーちゃん先生は丁寧な言葉遣いで、こちらが伝えたいことを端的に話してくれた。
はーちゃん先生の言葉を聞いた実里ちゃんのお母さんは、少しの間沈黙していた。突然押しかけてきた私たちを、娘に会わせるべきか考えているようで、沈黙が居たたまれなかった。怪しい者ではないのに、値踏みされているような気がして身体がきゅっと縮こまる。
それは翠ちゃんも同じだったようで、唇を結んで固い表情をしていた。
しかし、私たちの心配とは裏腹に、しばらくするとガチャリと玄関の扉が開かれる音がした。てっきりインターホン越しに何かを言われると思っていたので、いきなり扉が開かれて身体がぴくんと跳ねる。
ザ、ザ、と足音を踏み鳴らして、一人の女性が門の前まで近づいてきた。その間も、得体の知れない不安が止まらなくて、私は翠ちゃんの肩を抱きながら激しくなる鼓動が収まるのを待っていた。
実里ちゃんのお母さんが、門の前に立った。鍵の開く音がした後、ギィ、と黒塗りの門が内側から開かれる。



