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・【08 昼食からの】
・
その後、教室で泣いているところをスタッフに見つかり、また走って逃げて、グラウンドの木々が生い茂っているところに隠れていた僕。
昨日と同じように、体育館にお弁当を用意したというアナウンスがあり、僕はトボトボと体育館に、できるだけ遅く行くことにした。お弁当をとるタイミングでかち合うのが何だか嫌だったからだ。最後にとって、誰もいないところで食べようと思っている。
その鬱蒼としたグラウンドの木々から抜け出して初めて分かったけども、どうやら小雨が降っているらしい。
樹木というものはこんな僕でも守ってくれていいなぁ、とか思いつつ、雨が降るグラウンドを歩いて体育館に着いた。案の定、お弁当は残り一個となっていた。
周りを見渡すと、ドスドス・チクチク・ガリガリがそれぞれ体育館の隅に1オノマトペずついて、もう一ヵ所の隅にヌメヌメとトロトロが2オノマトペで食べていて、その隅から少し離れたところで、キラキラとワクワクが一緒になってすごく談笑しながらお弁当を食べていた。
僕はお弁当が置いてある中央の台の近くで早食いして、すぐに体育館からいなくなることにした。
いっそのこともう自分のベッドがある教室で引きこもろうかなと思っていると、さっきまで背中で感じていたキラキラとワクワクの談笑が急に収まって、何だか不穏だなぁ、と思ってしまった。
振り返って様子を見たいけども、目が合ったら気まずいし、と思っていると、真後ろに誰かの陰が見えて、僕のほうにやって来ているオノマトペがいると分かった。
まさかキラキラとワクワクがわざわざ談笑を止めてまで、僕に文句を言いに来たのか、と思っていると、その声の主は、
「ペラペラ、ちょっとだけいい?」
トロトロだった。
僕は首だけ向くのは礼儀が良くないので、身体ごと向けると、僕のほうをキラキラとワクワクもチラチラ見てきていて、何だか気まずい。
トロトロには早く次の言葉を喋ってもらいたいけども、なんせトロトロなのでゆっくりしている。
トロトロがしっかり深呼吸したところで、トロトロは少し大きな声でこう言った。
「言い方が、悪かった、だけだよ。みんな、ペラペラには、感謝も、しているんだよ。本当だよ」
トロトロの目は何故か滲んでいた。
その理由が分からないままに、僕の瞳からは一筋の涙が流れた。
体育館は静寂に包まれて、外から雨の音が聞こえる。どうやら雨脚が強くなっているらしい。
いつの間にか僕はボロボロと泣いていた。とっくに涙なんて出し切ったと思ったのに。
視界が一切涙で遮られた僕の近くで、今度はヌメヌメの声が聞こえてきて、
「ペラペラを泣かせてしまって、ゴメンなさい」
と言った。
泣いていても喋ることはできるはずなのに、言葉がなかなか出せない。
何か喋ったほうがいいと思い、ペラペラのスイッチをオンにした、はずなのに、
「いや、僕が悪かった……」
としか言えず、静かな空気が流れる。
トロトロの足音が段々離れていくのを感じる。
僕は何も言えなくてもう愛想つかされたのかなと思った。
ヌメヌメも去る音がして、何か言えればいい時にこそ何も言えないと思っていると、また足音が近付いてきて、
「一緒に、食べよう。トロトロは、ペラペラが、好きだよ」
とトロトロが多分近くに座って、それと同時にヌメヌメの声もまたして、
「ぼくも一緒だよ。ペラペラ、大丈夫だから。大丈夫」
と言ってくれたので、さすがに何か喋らないと、と思って、
「いろいろ言われて、気が立っちゃって、良くないこと言って、本当にごめんなさい」
ヌメヌメは優しい声で、
「誰だってそうなるよ、ペラペラのせいでああなったわけじゃ絶対無いんだから」
トロトロも落ち着いた口調で、
「ヌメヌメの、言う通り。トロトロは、一番悪いのは、スタッフだと、思っているよ。トロトロたちは、みんな、生徒として、一生懸命、やっていた、だけだよ」
と言ったと思ったら、最後に小声で、
「それに、酷い、言い方をする、子たちが、良くなかったんだよ。ペラペラ、じゃなくてね」
と言ってくれた時にまた涙の勢いが止まらなくなってしまった。
ヌメヌメもずっと「うんうん、トロトロの言う通りだから、大丈夫だよ」と言ってくれて、あぁ、無理してリーダーシップをとろうとろうとしていた自分が良くなかったんだなと反省した。
もっと対等に一緒にやっていこうと思わないといけなかったんだ、と。
トロトロは僕の心を見透かすように、
「また、一から、やっていこう」
と言ってくれて、僕は本当に自分の悪さを改めることにした。
そこから三人でちょっとずつ会話を取り戻しながら、お弁当を食べていった。
主にトロトロとペースを合わせるように食べていったので、食べ切った時にはもう体育館でお弁当を食べているほかンおオノマトペはいなかった。
それにしてもトロトロのペースでご飯を食べると、よく噛むことになるので満腹中枢が刺激されて、いつもよりお腹いっぱいだ。
もしかするとトロトロが遅いのではなくて、僕たちが早いのではないか、ということを少し思った。
さて、これからどうしようといったところで、ヌメヌメが僕とトロトロの顔色を確認してから、
「体育館の上のスペースで、ワクワクとキラキラが卓球している。一緒にやりませんかと聞きに、い、行かないかな……」
そう言い切ると目をギュッと瞑ってしまったヌメヌメに僕は、ヌメヌメの手を握りながら、
「すごく良い案だと思う。僕、やっぱりワクワクとキラキラとも仲良くしたいよ」
と言うと、トロトロも強くうんと頷いてから、
「行こう。階段だから、足元、気を付けてね」
僕たち3オノマトペが階段から顔を出したところで、ワクワクとキラキラも足音で分かったのか、こちらをチラチラ見ていた。
キラキラはあからさまに苦々しい顔をして、こっちに背を向けるように立って、また卓球を再開した。
ここまでヌメヌメやトロトロにつれてきてもらって、全部任せるのはカッコ悪いので、僕が声を掛けることにした。
「ワクワク、キラキラ、さっきはごめんなさい」
そう言って頭をさげて、すぐに顔をあげたんだけども、相変わらず2オノマトペとも無視するような感じで、こっちを無理くり見ないようにしている。
僕は続ける。
「キラキラもワクワクとも、もう一度仲良くしたいんだ。それは変わらず本心で」
そう言った刹那、ワクワクがスマッシュをして、ゲームを決め切ったところで、
「やっぱり俺は無理だよ! 俺はペラペラのこと嫌いになれないよー!」
と声を荒らげたことを皮切りに、すぐキラキラのほうを見て、
「何でキラキラはペラペラと距離を置きたいのー?」
と悪意ナシの口調で質問をぶつけて、キラキラはたじろいだ。
ワクワクはお構いなしに続ける。
「だってずっとペラペラがいろいろ頑張ってくれていたのに! 一個変なこと言っただけでそうなるのはさすがに卑怯だよ! そりゃ俺も何かを頑張ったかもだけども、キラキラだって何かを頑張ったかもだけどー! ペラペラが一番頑張っていたのは火を見るよりも明らかでしょー! その辺のことキラキラは一体どう思っているのー!」
するとキラキラが卓球台を両手でバンと叩いてから、
「だって! ペラペラばっか目立って! ズルいんよ! 一番目立つのは吾輩のはずなんよ!」
トロトロが口を開き、
「じゃあ、みんなで、目立てば、いいじゃないか」
キラキラはぐぐぐっと唇に力を入れてから、
「それなんよ! ペラペラが一番で! 次のヒーローは間違いなくトロトロなんよ! で! ヌメヌメが三番目! さらにその次がワクワク! 吾輩は……!」
と言って口をつぐんだ。
ワクワクが笑顔で、
「じゃあキラキラが五番目から一気に捲って一位になったら本当のヒーローだよ! そうなる作戦はあるのーっ?」
と言った時にキラキラが少し泣き出しそうな顔で、
「そうなんよ! そうすればいいんよ! ゴメン! ペラペラ! ただの嫉妬だ! 全部全部醜い嫉妬だ! 全員同率一位、目指すんよ!」
そう言って人差し指を天に掲げたキラキラ。
その時だった。
体育館の下から怒号が聞こえてきた。ドスドスの声だ。
「おらぁー! テメェら! また群がりやがって! おれらとサッカー勝負しろや! マジで!」
体育館のコートのほうを見ると、ドスドスとチクチクとガリガリがこちらを睨んでいた。
でも本気で怒っているような睨みじゃなくて、どこかカッコつけたような睨みで、本当にこっちのことを憎いんでいるという風には感じられなかった。
キラキラが即座に、
「よっしゃ! 次こそ生徒同士のサッカーで吾輩がヒーローなんよ!」
と言えば、チクチクがこっちにも聞こえる声で、
「は? 体力オバケの小生が目立つに決まってんだろ、意味分かんねぇ」
ヌメヌメは僕らと向こうの顔色をキョロキョロと伺っていると、ガリガリが、
「おい! ヌメヌメ! 挙動不審やってんじゃねぇよ! クズが! それともビビって勝負やめるか! クズ!」
と言ってきたところですぐにヌメヌメが、
「ぼくもやるよぉ!」
と声をあげたと同時にトロトロも、
「トロトロも、勿論やる」
対するドスドスは、
「ヌメヌメもトロトロも図体がちょっと大きいだけだろ。おれほどデカくねぇからな、試合中に吹き飛ばしてやるぜ、マジで」
でもそれも攻撃性満々じゃなくて、軽く笑いながらの、本当にスポーツを介した言い合いといった感じ。
僕は負けてられないと思って、
「すぐ降りる!」
と言ったところで、トロトロは既に階段をおり始めていて、自分が遅いということを自覚しているからこその早さもあるんだ、と感心した。
階段をおりてくると、その階段の近くに3オノマトペが移動していて、チクチクが即座に、
「は? もっと早く来いよ、トロトロの足が一番先に見えたぞ。意味分かんねぇ」
と言ってフッと笑った。
僕たち8オノマトペはグラウンドに移動した。
さっきまで雨が降っていたけども、今は止んでいる。
ちょっと地面はぬかるんでいるけども、サッカーはこれくらいでもやるスポーツなので、気にせず対決となった、ところでスタッフやカメラマンのスタッフが大勢近付いてきて、とあるスタッフが、
「さすがに三対五じゃ分が悪いでしょ、わたくしがゴールキーパーしますよ」
と言って、向こうのチームに入った。
それでもこっちが1オノマトペ多いので、キラキラが、
「こっちは交代アリの三対三にする?」
と言ったんだけども、僕はあえて、と思って、
「このまま三対五にしたほうがキラキラはフリーになれるからシュートのチャンスが増えるけども」
と言ってみると、キラキラが大きな声で向こうに向かって、
「みんなでサッカーしたいからこれでいーぃん?」
と声を掛け、ドスドスがドデカい声で、
「これくらいのハンデが必要だろ、マジで」
チクチクは、
「は? 全員でやりたいんだから当たり前だろ」
ガリガリは、
「全員クズだし、余裕だよ!」
とみんな了承してくれたっぽい。
というわけで四対五(向こうはスタッフがゴールキーパーをしている)の変則人数で試合が開始された。
・【08 昼食からの】
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その後、教室で泣いているところをスタッフに見つかり、また走って逃げて、グラウンドの木々が生い茂っているところに隠れていた僕。
昨日と同じように、体育館にお弁当を用意したというアナウンスがあり、僕はトボトボと体育館に、できるだけ遅く行くことにした。お弁当をとるタイミングでかち合うのが何だか嫌だったからだ。最後にとって、誰もいないところで食べようと思っている。
その鬱蒼としたグラウンドの木々から抜け出して初めて分かったけども、どうやら小雨が降っているらしい。
樹木というものはこんな僕でも守ってくれていいなぁ、とか思いつつ、雨が降るグラウンドを歩いて体育館に着いた。案の定、お弁当は残り一個となっていた。
周りを見渡すと、ドスドス・チクチク・ガリガリがそれぞれ体育館の隅に1オノマトペずついて、もう一ヵ所の隅にヌメヌメとトロトロが2オノマトペで食べていて、その隅から少し離れたところで、キラキラとワクワクが一緒になってすごく談笑しながらお弁当を食べていた。
僕はお弁当が置いてある中央の台の近くで早食いして、すぐに体育館からいなくなることにした。
いっそのこともう自分のベッドがある教室で引きこもろうかなと思っていると、さっきまで背中で感じていたキラキラとワクワクの談笑が急に収まって、何だか不穏だなぁ、と思ってしまった。
振り返って様子を見たいけども、目が合ったら気まずいし、と思っていると、真後ろに誰かの陰が見えて、僕のほうにやって来ているオノマトペがいると分かった。
まさかキラキラとワクワクがわざわざ談笑を止めてまで、僕に文句を言いに来たのか、と思っていると、その声の主は、
「ペラペラ、ちょっとだけいい?」
トロトロだった。
僕は首だけ向くのは礼儀が良くないので、身体ごと向けると、僕のほうをキラキラとワクワクもチラチラ見てきていて、何だか気まずい。
トロトロには早く次の言葉を喋ってもらいたいけども、なんせトロトロなのでゆっくりしている。
トロトロがしっかり深呼吸したところで、トロトロは少し大きな声でこう言った。
「言い方が、悪かった、だけだよ。みんな、ペラペラには、感謝も、しているんだよ。本当だよ」
トロトロの目は何故か滲んでいた。
その理由が分からないままに、僕の瞳からは一筋の涙が流れた。
体育館は静寂に包まれて、外から雨の音が聞こえる。どうやら雨脚が強くなっているらしい。
いつの間にか僕はボロボロと泣いていた。とっくに涙なんて出し切ったと思ったのに。
視界が一切涙で遮られた僕の近くで、今度はヌメヌメの声が聞こえてきて、
「ペラペラを泣かせてしまって、ゴメンなさい」
と言った。
泣いていても喋ることはできるはずなのに、言葉がなかなか出せない。
何か喋ったほうがいいと思い、ペラペラのスイッチをオンにした、はずなのに、
「いや、僕が悪かった……」
としか言えず、静かな空気が流れる。
トロトロの足音が段々離れていくのを感じる。
僕は何も言えなくてもう愛想つかされたのかなと思った。
ヌメヌメも去る音がして、何か言えればいい時にこそ何も言えないと思っていると、また足音が近付いてきて、
「一緒に、食べよう。トロトロは、ペラペラが、好きだよ」
とトロトロが多分近くに座って、それと同時にヌメヌメの声もまたして、
「ぼくも一緒だよ。ペラペラ、大丈夫だから。大丈夫」
と言ってくれたので、さすがに何か喋らないと、と思って、
「いろいろ言われて、気が立っちゃって、良くないこと言って、本当にごめんなさい」
ヌメヌメは優しい声で、
「誰だってそうなるよ、ペラペラのせいでああなったわけじゃ絶対無いんだから」
トロトロも落ち着いた口調で、
「ヌメヌメの、言う通り。トロトロは、一番悪いのは、スタッフだと、思っているよ。トロトロたちは、みんな、生徒として、一生懸命、やっていた、だけだよ」
と言ったと思ったら、最後に小声で、
「それに、酷い、言い方をする、子たちが、良くなかったんだよ。ペラペラ、じゃなくてね」
と言ってくれた時にまた涙の勢いが止まらなくなってしまった。
ヌメヌメもずっと「うんうん、トロトロの言う通りだから、大丈夫だよ」と言ってくれて、あぁ、無理してリーダーシップをとろうとろうとしていた自分が良くなかったんだなと反省した。
もっと対等に一緒にやっていこうと思わないといけなかったんだ、と。
トロトロは僕の心を見透かすように、
「また、一から、やっていこう」
と言ってくれて、僕は本当に自分の悪さを改めることにした。
そこから三人でちょっとずつ会話を取り戻しながら、お弁当を食べていった。
主にトロトロとペースを合わせるように食べていったので、食べ切った時にはもう体育館でお弁当を食べているほかンおオノマトペはいなかった。
それにしてもトロトロのペースでご飯を食べると、よく噛むことになるので満腹中枢が刺激されて、いつもよりお腹いっぱいだ。
もしかするとトロトロが遅いのではなくて、僕たちが早いのではないか、ということを少し思った。
さて、これからどうしようといったところで、ヌメヌメが僕とトロトロの顔色を確認してから、
「体育館の上のスペースで、ワクワクとキラキラが卓球している。一緒にやりませんかと聞きに、い、行かないかな……」
そう言い切ると目をギュッと瞑ってしまったヌメヌメに僕は、ヌメヌメの手を握りながら、
「すごく良い案だと思う。僕、やっぱりワクワクとキラキラとも仲良くしたいよ」
と言うと、トロトロも強くうんと頷いてから、
「行こう。階段だから、足元、気を付けてね」
僕たち3オノマトペが階段から顔を出したところで、ワクワクとキラキラも足音で分かったのか、こちらをチラチラ見ていた。
キラキラはあからさまに苦々しい顔をして、こっちに背を向けるように立って、また卓球を再開した。
ここまでヌメヌメやトロトロにつれてきてもらって、全部任せるのはカッコ悪いので、僕が声を掛けることにした。
「ワクワク、キラキラ、さっきはごめんなさい」
そう言って頭をさげて、すぐに顔をあげたんだけども、相変わらず2オノマトペとも無視するような感じで、こっちを無理くり見ないようにしている。
僕は続ける。
「キラキラもワクワクとも、もう一度仲良くしたいんだ。それは変わらず本心で」
そう言った刹那、ワクワクがスマッシュをして、ゲームを決め切ったところで、
「やっぱり俺は無理だよ! 俺はペラペラのこと嫌いになれないよー!」
と声を荒らげたことを皮切りに、すぐキラキラのほうを見て、
「何でキラキラはペラペラと距離を置きたいのー?」
と悪意ナシの口調で質問をぶつけて、キラキラはたじろいだ。
ワクワクはお構いなしに続ける。
「だってずっとペラペラがいろいろ頑張ってくれていたのに! 一個変なこと言っただけでそうなるのはさすがに卑怯だよ! そりゃ俺も何かを頑張ったかもだけども、キラキラだって何かを頑張ったかもだけどー! ペラペラが一番頑張っていたのは火を見るよりも明らかでしょー! その辺のことキラキラは一体どう思っているのー!」
するとキラキラが卓球台を両手でバンと叩いてから、
「だって! ペラペラばっか目立って! ズルいんよ! 一番目立つのは吾輩のはずなんよ!」
トロトロが口を開き、
「じゃあ、みんなで、目立てば、いいじゃないか」
キラキラはぐぐぐっと唇に力を入れてから、
「それなんよ! ペラペラが一番で! 次のヒーローは間違いなくトロトロなんよ! で! ヌメヌメが三番目! さらにその次がワクワク! 吾輩は……!」
と言って口をつぐんだ。
ワクワクが笑顔で、
「じゃあキラキラが五番目から一気に捲って一位になったら本当のヒーローだよ! そうなる作戦はあるのーっ?」
と言った時にキラキラが少し泣き出しそうな顔で、
「そうなんよ! そうすればいいんよ! ゴメン! ペラペラ! ただの嫉妬だ! 全部全部醜い嫉妬だ! 全員同率一位、目指すんよ!」
そう言って人差し指を天に掲げたキラキラ。
その時だった。
体育館の下から怒号が聞こえてきた。ドスドスの声だ。
「おらぁー! テメェら! また群がりやがって! おれらとサッカー勝負しろや! マジで!」
体育館のコートのほうを見ると、ドスドスとチクチクとガリガリがこちらを睨んでいた。
でも本気で怒っているような睨みじゃなくて、どこかカッコつけたような睨みで、本当にこっちのことを憎いんでいるという風には感じられなかった。
キラキラが即座に、
「よっしゃ! 次こそ生徒同士のサッカーで吾輩がヒーローなんよ!」
と言えば、チクチクがこっちにも聞こえる声で、
「は? 体力オバケの小生が目立つに決まってんだろ、意味分かんねぇ」
ヌメヌメは僕らと向こうの顔色をキョロキョロと伺っていると、ガリガリが、
「おい! ヌメヌメ! 挙動不審やってんじゃねぇよ! クズが! それともビビって勝負やめるか! クズ!」
と言ってきたところですぐにヌメヌメが、
「ぼくもやるよぉ!」
と声をあげたと同時にトロトロも、
「トロトロも、勿論やる」
対するドスドスは、
「ヌメヌメもトロトロも図体がちょっと大きいだけだろ。おれほどデカくねぇからな、試合中に吹き飛ばしてやるぜ、マジで」
でもそれも攻撃性満々じゃなくて、軽く笑いながらの、本当にスポーツを介した言い合いといった感じ。
僕は負けてられないと思って、
「すぐ降りる!」
と言ったところで、トロトロは既に階段をおり始めていて、自分が遅いということを自覚しているからこその早さもあるんだ、と感心した。
階段をおりてくると、その階段の近くに3オノマトペが移動していて、チクチクが即座に、
「は? もっと早く来いよ、トロトロの足が一番先に見えたぞ。意味分かんねぇ」
と言ってフッと笑った。
僕たち8オノマトペはグラウンドに移動した。
さっきまで雨が降っていたけども、今は止んでいる。
ちょっと地面はぬかるんでいるけども、サッカーはこれくらいでもやるスポーツなので、気にせず対決となった、ところでスタッフやカメラマンのスタッフが大勢近付いてきて、とあるスタッフが、
「さすがに三対五じゃ分が悪いでしょ、わたくしがゴールキーパーしますよ」
と言って、向こうのチームに入った。
それでもこっちが1オノマトペ多いので、キラキラが、
「こっちは交代アリの三対三にする?」
と言ったんだけども、僕はあえて、と思って、
「このまま三対五にしたほうがキラキラはフリーになれるからシュートのチャンスが増えるけども」
と言ってみると、キラキラが大きな声で向こうに向かって、
「みんなでサッカーしたいからこれでいーぃん?」
と声を掛け、ドスドスがドデカい声で、
「これくらいのハンデが必要だろ、マジで」
チクチクは、
「は? 全員でやりたいんだから当たり前だろ」
ガリガリは、
「全員クズだし、余裕だよ!」
とみんな了承してくれたっぽい。
というわけで四対五(向こうはスタッフがゴールキーパーをしている)の変則人数で試合が開始された。



