オノマトペの友情リアリティーショー


・【07 一緒】


 学校のアナウンスで体育館にお弁当があるので、取ってその場で食べてくださいと言われたので、かくれんぼをしていた僕たちは一斉に出てきて、4オノマトペで体育館に行った。
 すると他の4オノマトペがそれぞれ別々の隅で既にお弁当を食べ始めていて、みんなお弁当を手にしたところで僕は「ワクワクのところに行こう」と言うと、みんな特に異論を唱えず、4オノマトペでワクワクのいる隅へ行くと、ワクワクが目を輝かせながら、
「来てくれたんだ! 一緒に食べよー!」
 と受け入れてくれて、僕、トロトロ、キラキラ、ヌメヌメ、ワクワクの5オノマトペで一緒に食べることにした。
 最初は普通になんてことない会話をしながら食べ進めていたんだけども、ワクワクがふとトロトロへ、
「何で食べるのもそんなに遅いのー?」
 トロトロは少し困惑しつつも、
「これが、いつも、だから」
 と答えて、まあそうだろうなと思っていると、ワクワクがさらに詰めるように、
「そんなに遅かった周りに置いていかれなーい?」
 と言って、トロトロも完全に眉毛を八の字にし始めたので、ここは、と思って僕が口を挟むことにした。
「何でも自分のペースがあるんだから、質問に質問重ねたら答えられないよ」
 するとワクワクが、
「でもでもー、遅いと不便じゃん、何か不便だったことあるー?」
 と止まらないので、僕は思い切ってペラペラのスイッチを入れて、
「じゃあワクワクはその質問攻めで誰か怒ったことある? 怒られた時はどう思った? 怒られたことなくても反省したことは? 反省とかしたことない?」
 と一気に質問攻めにすると、ワクワクは「わ。わー、わっ」と言って喋れなくなり、そのタイミングで僕が、
「そういうことだよ。誰だってペースがあるんだから、自分のペースでやろうとしてもしょうがないよ」
 と言うと、ワクワクは強く頷いてから、
「そだよねー、ゴメンねー、トロトロ。つい俺ってせっかちでー」
 と少し反省しているような顔色を見せた。
 それに対して僕は、
「それもワクワクのペースだから、それはそれでワクワクのことは尊重したいってみんな思っているよ」
 キラキラは挙手しながら、
「そう! 俺もみんなを尊重しているんよ!」
 と言って、ワクワクとトロトロに向かってそれぞれウィンクをすると、トロトロが、
「ペラペラが、代弁してくれた、けども、自分でも、言えると、いいなぁ」
 と言ったので、僕はすかさず、
「きっとできるよ。だってバスケの時もシュートまでの動作がどんどん早くなっていっていたし」
 と言うと、ヌメヌメが、
「そ、そう。トロトロのシュート、意外と早くて、本当にすごいっ」
 と前のめりになって言い、キラキラは、
「3ポイントシュート決め過ぎだったからね! まあ吾輩も本気になればあれくらい!」
 と張り合うところがらしいなぁ、と思った。
 ワクワクも晴れた顔に戻ったところで、キラキラが、
「ま! とりあえず仲直りの写真撮影でもするんよ!」
 と言って、スマホを取り出し、
「どうせなら全員で撮るんよ!」
 とみんなを画角に入れようとしていて、僕の隣にいるヌメヌメはちょっと引いた位置にいこうとするんだけども、僕は小声で、
「ヌメヌメも近付いてっ」
 と言いつつ、僕はヌメヌメに近付いて、無事綺麗な写真が撮れたところで、何か話し掛ける声が聞こえてきた。
「一人でいる我の当てつけか、クズ連中め」
 声がするほうを全員で向くと、近くにガリガリが立っていた。
 ワクワクが即座に、
「どうしてそう思ったの?」
 とまた質問してしまうと、ガリガリが矢継ぎ早に「ウゼェよ、オマエ、本当に」と言って、かなり空気が悪くなってきているような気がする。
 でもこれは正直真っ当な質問だとも思うから、ここはちゃんとワクワクを擁護することにした。
「今のは普通の質問だと思うよ」
 するとすぐにガリガリがこっちを睨んできたんだけども、僕は続ける。
「でも理由は分かるよ、自分が一人で楽しくないからでしょ。じゃあ一緒にいようよ」
 僕のこの発言にトロトロとヌメヌメが少し難色を示したように思える。当たり前だけどもガリガリが嫌なことを言うヤツだと正しく認識しているらしい。
 それに対して当然のごとくガリガリが、
「我は一人でも全然いいんだよ、クズが。勝手におもんぱかるなよ」
 でも僕は負けじと引かず、
「最初に絡んできたのが答えなんじゃないの? どうでもいいなら絡んでこないでしょ」
 そう言いながら僕が立ち上がると、ガリガリが喧嘩の構えになったんだけども、僕は踵を返して、壁に向かって歩いて行き、
「じゃあみんなもお弁当終わったし、だるまさんがころんだでもしようよ。子供っぽい遊びだけども本気でやると面白いよ」
 するとキラキラも手を挙げて、
「吾輩はだるまさんがころんだで圧勝するから、これくらい距離をとっても大丈夫なんよ!」
 と言いながら走り出して、体育館の中央地点まで行った。
 ヌメヌメもワクワクも楽しそうに走り出して、トロトロもいつもよりは早い動きで、キラキラがいるところまで走っていった。
 近くにはガリガリだけ。僕は一回振り返って、ガリガリのことを見ながら、こう言った。
「ガリガリはその距離から始めるの?」
 するとガリガリは大笑いしてから、
「バカみてぇ」
 と言うと、ゆっくりキラキラたちのほうへ歩いていった。
 そこから僕たちは6オノマトペでだるまさんがころんだをしていると、向こうの隅で怒鳴り声が聞こえてきた。
 いつの間にやらドスドスとチクチクが険悪になっているようだった。
 ガリガリが「アイツらはクズだなぁ」と言った声が聞こえたみたいで、ドスドスとチクチクが同時にこっちを向いた。
 僕は矢継ぎ早に、ガリガリより先に、
「こっちもしょうもない遊びをしているクズだからさ! 一緒にだるまさんがころんだしようよ!」
 すぐさまキラキラが、
「おいおい! 誘ったの吾輩が先ってことにしてほしいんよ! ドスドスとチクチクも来るといいんよ!」
 ワクワクは頭上に疑問符を浮かべながら、
「何でキラキラが先に誘ったことにしたいの?」
 と言えば、キラキラが少し面倒クサそうな素振りをしつつも、でもちゃんとカッコつけながら、
「遊びに誘うヤツのほうがカッコイイんよ!」
 ワクワクは強く頷いて、
「じゃあ俺もカッコイイほうがいい! ドスドスもチクチクも一緒にやろうぜー!」
 するとトロトロがいつもよりずっと大きな声で、
「大勢、いたほうが、楽しいですっ!」
 と言い、ヌメヌメもみんなの表情を確認してから、
「やりましょう!」
 と叫んだ。
 するとドスドスがこっちへ向かってドスドス歩いてきたと思ったら、すぐにチクチクが走ってドスドスを追い抜くと、ドスドスも走り出して、だるまさんがころんだのスタート地点にドスドスもチクチクも着き、ドスドスとチクチクが口々に、
「おれのほうがホント早く着いた!」
「は? 小生のほうが早く呼ばれたんだけど、意味分かんねぇ」
 キラキラがその場でターンしてから、
「じゃあ勝負の続きはだるまさんがころんだだな! くぅーん! 俺決まったんよ!」
 すぐさまワクワクが、
「でも言い出したのはペラペラでは?」
 と言うと、ガリガリとヌメヌメが吹き出して笑った。
 そこから僕たち8オノマトペは全員でだるまさんがころんだをして、ずっと楽しく過ごしていた。
 たいした企画ももうないまま、そのまま二日目終了といった感じで、ベッドのあるそれぞれの教室に戻された。
 夜九時くらいに、昨日と同じようにスタッフが入ってきて、今日はどうだったかの振り返りを質問された。
 これはかなり僕の思い描いた通りになっている。
 ちゃんと僕がリーダーみたいになっているし、破綻も無い。
 あとはスタッフにも僕がリーダーなんだということを示したい。
 ここからは僕中心で話が回るようにしたくて、ハッキリとスタッフにこう言うことにした。
「僕がこれからもリーダーシップを発揮して! 全員仲良くなりますよ!」
 スタッフはあまり興味無さそうに頷くだけだったけども、宣言もしたし、僕の気持ちは高らかだった。
 三日目の午前の部はサッカー対決となった。
 しかもチーム分けして四対四をするわけではなくて、スタッフチームとのサッカー対決。
 向こうも8オノマトペで、なんせスタッフは大人なので体格差とかあるけども、多少は手加減してくれるのだろう多分。
 三分のアップと作戦会議が設けられたわけだけども、三分はどう考えても短い。
 さらにスタッフチームのほうは既に作戦会議を先に終えているみたいで、アップだけ入念にやっていて何か卑怯だ。
 僕は8名制のサッカーのフォーメーションとかよく知らないけども、なんとなくこうかもって感じでそれぞれのフォーメーションを決めていくことにした。
「ゴールキーパーはドスドス。一番大切なポジションだから、身体の大きいドスドスにしてもらいたい」
 ドスドスはもう自分が自分がという感じでもなく、
「まあやっぱそうなるわな」
 とそのまま納得してくれた。
「ディフェンダーはワクワクとヌメヌメ、機敏な動きでパスコースを限定して、ゴールキーパーのドスドスが止めるといった感じかな」
 すると即座にワクワクが、
「俺がディフェンダーで本当に良いの?」
 それに対して僕は矢継ぎ早に、
「守備が良ければ負けはないから、ワクワクとヌメヌメの安定感あるコンビがいいと思う」
 と答えると、ワクワクとヌメヌメは顔を見合わせて喜んだ。
 僕は次と思って、
「ミッドフィルダーは左から順に、僕、トロトロ、チクチクでいこうと思っている。僕とチクチクは攻める時はフォワード、守備の時はディフェンダーで一番運動量の激しいポジション。単純に運動量が豊富だから。真ん中のトロトロはパスに専念してほしい。トロトロはバスケの時、技術が本当にあったからそれが一番良いと思う」
 チクチクは軽く笑ってから、
「は? 大変では? まあ他に任せられないからやるけどね」
 最後に僕は、
「キラキラとガリガリがフォワードをやってほしい。キラキラがワントップでガリガリがセカンドトップといって、ワントップの周りを衛星のように動くポジションをしてほしい」
 キラキラがすごく嬉しそうに、
「やっぱり吾輩がワントップだ! 点いっぱい取るんよ!」
 とサムアップした。ガリガリも満足げに、
「まあ我はクズじゃないからな」
 と言った。
 特に異論も無さそうで、すんなりポジションが決まり、今までの喧騒が嘘のようだった。
 余った時間でパス練習をすると、案の定トロトロがダイレクトでパスを出すことが本当に長けていて、トロトロが走ることは望めなさそうだけども、トロトロへのパスコースが開けば、一気に前線に良いボールが配給できるような気がする。
 そんなこんなで即座に試合開始で、すぐ分かった。
 スタッフは全然手加減しないって。
 トロトロにはマンマークが2オノマトペついて、全然トロトロへパスが出せない。
 結果的に僕とチクチクが独力でドリブル突破が試みて、そこからラストパスを供給するしかないんだけども、なんせ大人は早いし、足も長い。
 キック力もあり、ワクワクがなんとか相手のシュートへのラストパスをパスカットして自分のボールにしようとしても、パワーが強過ぎて、ワクワクは収めることができなくて、ボールはそのまま外に飛んでいき、コーナーキックになってしまう。
 このセットプレーの時に一番大人との体格差を感じてしまう。
 大人と同じくらいの身長があるのはドスドスのみ。あとは自由に上から叩きつけるヘディングであっという間に2点先行されてしまった。
 するとチクチクが、
「は? ポジションミスでは?」
 と言ったのを皮切りに、ガリガリが、
「全然こっちにパス来ないんだけども。いないの? クズが」
 と言い出して、ドスドスも、
「ワクワクとヌメヌメ、ちゃんとやれや! マジで!」
 と怒号をあげた。
 でも、と思って、
「大人相手に2点だけで済んでいると思って、とりあえず1点でも返そう!」
 と声を掛けた、でもどうだろうか、ちょっとみんなさすがに勝気過ぎというか、大人には当然のように負けると思ってくれればいいのに。考えたら分かるようなことじゃない?
 ハーフラインからのスタートの時に、ミッドフィルダーのトロトロがディフェンダーのワクワクにパスを出したところで、すぐにワクワクがトロトロにパスを返すんだろうなと思ったタイミングで、僕はオフサイドラインギリギリに走り出すと、思った通り、トロトロから針の穴を通すようなパスが出てきて、そのままドリブルで走る。
 上手く相手の裏をとって、マイナスからクロスをあげると、ガリガリの足元にジャストで、ガリガリはワンタッチしたところで、相手のスタッフがすごい勢いでガリガリを吹き飛ばした。
 すぐさまキラキラが、
「レッドカードだよ!」
 と声を荒らげ、やられたガリガリも足を痛がって立てなくなっているんだけども、スタッフチームは全然止まらず、審判もなんせスタッフがやっているので笛は一切吹かず、チクチクがガリガリに近寄ろうかどうか迷っているうちに抜かれたところで、ヌメヌメが叫んだ。
「足元ヌメヌメ!」
 ヌメヌメがオノマトペとしての能力を使った瞬間だった。
 審判のスタッフが笛を吹き、
「能力禁止!」
 と声をあげた。
「そんな話聞いていない!」
 と僕が即座に声をあげたんだけども、審判のスタッフはPKだと主張をし、周りのスタッフチームのオノマトペも集まってきて、僕たちをボール保持者から剥がしていき、結局なし崩しのままPKになり、審判のスタッフは笛で“蹴ってもいいの合図もせず、PKキッカーのスタッフは急にボールを蹴って、当然ドスドスは笛の合図があると思っているので、そのまま突っ立ったままになり、簡単に3失点目となった。
 するとドスドスがドデカい声をあげた。
「おれがキーパーやってやってんのに3失点なんてプライドズタズタだわ! やっぱポジションからおかしかったんだよ! マジで!」
 即座にチクチクが結構大きな声で、
「は? それさっき小生が言ったけど? 意味分かんねぇ。ペラペラ、オマエが間違っていたんじゃないか?」
 ガリガリはキラキラに支えられて、なんとか立ち上がり、僕に向かって、
「もうちょい良いパス出せよ! 下手クズがぁ!」
 ワクワクも首をキョロキョロさせつつも、
「ペラペラがポジション選びミスったという自覚ある?」
 と言い出して、ヌメヌメはみんなの表情を伺い、トロトロはあわわと焦っているようだった。
 するとキラキラが、
「もっと吾輩目立ちたいんよ! ペラペラもちゃんとやってほしいんよ! 吾輩にパス出せば良かったんよ!」
 と悔しがって、何でこんな僕ばかり責められないといけないんだと思い、ついペラペラのスイッチを入れてしまい、
「みんな納得したじゃん! ポジションさぁ! というか“できない連中のくせに、できるヤツに全部押し付けるなよ!”」
 言ってすぐに言っちゃいけないことを言ってしまったと思った。
 でももう時すでに遅し、口々に、
「マジでおれが大将するべきだったな、やっぱ」
「は? できない連中って何? 意味分かんねぇ」
「ぼく、もう分かんない……」
「ペラペラってできる側なのー?」
「そんなこと思っていたのかよ、クズが」
「ど、ど、どうし、どうして、どうしよう」
「吾輩ほどできるヤツはいないんよ!」
 そう言って散り散りにどこかへ行ってしまい、サッカー対決はそのまま中断になってしまった。
 本当にものの見事に総スカンといった感じ。
 するとスタッフの一人が嬉しそうに、
「どうしたんですかぁ! リーダーじゃないんですかぁ!」
 と言ってきて、カメラも何か五台くらいきている。
 もう何なんだ、訳が分からないと思いながら、ずっと俯いて、カメラを振り切るために走って、校舎のどこかの教室に入って、一人で泣いた。