・
・【02 一対一でトークする】
・
机が端にどかされて、イスが二脚真ん中にある教室にやってきた僕。カメラを構えているスタッフと、膝立ちしているスタッフと、座っているスタッフの3オノマトペで、人数は最小限って感じで、そんなに予算が潤沢にある感じではなさそうだ。
僕が先に部屋のイスに着き、そのあとドッスドッスと強い足音でドスドスがやって来た。
うわー、初っ端からドスドスだぁ、と思っていると、ドスドスがイスに座りながら、
「何か不満か? 偉そうだな」
と偉そうな声でそう言った。
というかドスドスって、ぶっきらぼうで鈍感なほうだと思ったら、僕の顔の機微に反応できるんだ、気を付けないと。
「いやいや、ちょっと存在感があってビックリしているだけだよ」
と若干褒めるような言い方でそう言うと、ドスドスは分かりやすく機嫌良さそうに、
「まあな、おれはこんな連中の大将になれる器だからな」
こんな連中って……不遜過ぎる。
自分はもう大将のつもりでいるんだ、でも僕だってリーダーシップをとりたいし。
ここは適当におだてるのも良くないかもしれない。おだて過ぎたら、ただの太鼓持ちになってしまう。意識が格下になることは避けたい。
相も変わらず僕は脳内でペラペラ考える。でもそれこそが僕の最大の武器だと思うから。
「ところで、ドスドスの自慢ってなんだい?」
「おれの自慢かぁ、よく聞いておけよ」
……普通、自慢話を聞かされることは嫌なこととされているが、僕は自慢をしっかり引き出したいと思っている。
何故なら自慢にはその人の”好き”が詰まっているから。オノマトペなりを知るにはまずは自慢を聞くこと、それこそ僕が考えた最適解だ。
逆にその自慢で触れなかったところが興味の無い部分になる。ちなみにあとから”苦手な雰囲気”を聞く予定だ。苦手もその人の性格が詰まっているものだから。ただし絶対に自慢から聞き、良い気持ちになってもらってから「逆に苦手な雰囲気はどう?」と聞く。それが鉄則。
あとは両方に同調するように頷くこと。人は同意されるだけで心が開かれるものだから。特に苦手のほうはそのまま一緒に悪口を言い合う感じのほうが仲良くなりやすかったりするものだ。
さて、ドスドスはどんな自慢を言うか。高圧的そうな性格だし、得意なスポーツで圧勝した系かもしれない。金メダルを獲ったとかそんな感じだろう。
ドスドスはおもむろに口を開き、
「うるせぇこと言ってくるヤツを殴って黙らせた、かな。やっぱそういうのがマジで痛快なわけだよ」
僕は絶句してしまった。まさか自慢で暴力行為、というか犯罪行為を自分から喋るなんて思ってもいなかった。
僕の気持ちなんて露知らず、ドスドスは気分良さそうに喋り続ける。
「やっぱさ、うるせぇ格下の話なんて聞いてられねぇじゃん、何か正義感ぶっているというか意味分かんねぇ、おれにはおれの正義があるわけだし、絶対的な悪なんて存在しないわけだし。だからおれは思い切り腹にドスドス殴ってやって、黙らせたのはホント気持ち良かったな」
そうフンスと鼻息を鳴らしたドスドス。え、え、こういう時って、どうすればいいの……教会以外で犯罪行為を吐露するオノマトペっているの? しかも全然悪いことと思っていなさそう。悪いことをしてやったというイキリだったら、まだ分かるけども、全然自分のこと正しいと思っている。かなりイカれている。
僕は何だかペラペラの能力を使おうとしていないのに、どんどん身体も心も薄く薄くなっているような気がした。否、実際体は薄くなってきている。そのままこの世から消えたいくらいの気持ち。こんなヤツが友情リアリティーショーに参加? でもそれを質問したら絶対嫌味みたいにとられるだろうから、それは聞かずに、予定通りのことを聞くか。
「逆に苦手な雰囲気とかある?」
するとドスドスの眼光は鋭くなり、前のめりになり、僕との距離が物理的に近くなったところで、
「まあそうだなぁ、そうやって苦手を喋らせて、弱みを握ろうとしてくるヤツだな」
僕は身体を仰け反ってから固まってしまった。全然そんなつもりで聞いたわけじゃないのに。
このオノマトペの物事の受け取り方、正直おかし過ぎる……。
でもこれはさすがに否定しないといけないと、と思って、
「そ、そんなつもりはないです……一緒だったら一緒に共感し合おうと思って……共感し合うことが仲良くなる一歩だから……」
もうちゃんと全部ネタバラシすることにした。ちゃんと言わないと、いやちゃんと言っても多分伝わらない相手だとは思うけども、言わなきゃ本当に僕が悪のままで終わるから。
ドスドスは鼻で笑ってから、
「オマエごときがおれと話が合うわけねぇだろ、住む世界が違うんだから」
いや一緒に友情リアリティーショーに参加している時点で住む世界全く一緒だけども……なんてことは言えない。
僕は愛想笑いをしてしまうと、急にドスドスは立ち上がり、
「おれのことを笑うんじゃねぇ!」
と言ってなんと座っている僕の爪先を蹴ってきたのだ。軽く掠るような蹴りだったので痛くは無かったんだけども、すごくビックリしてしまい、震えるよりも先に動けなくなってしまった。
すると膝立ちしているスタッフが間に入って、ドスドスを教室の外に出した。
僕はポカンと開いた口が塞がらないといった状態でいると、カメラのスタッフは満足げに頷き、ドスドスを外に出したスタッフは戻ってきて僕へ、
「あんまり喧嘩し過ぎないように」
と言ってきて、これ僕が悪いの? と思ってしまった。
僕は促されるまま、イスにずっと座っていると、今度はチクチクが入ってくるなり、
「小生が下手(しもて)?」
とちょっと大きな声で言って、こんなイスの座る位置に文句を言うオノマトペなんて小学生でいるんだと思って目を丸くしてしまった。
対面で座ってもずっとぶつぶつ何か言っている、というかこの距離だとさすがに聞こえてくる。
「何で下手(しもて)? は?」
「というか小生が歩いてきたのも分かんないし」
「は? オマエが小生のいた部屋に来いよ」
「というか何でこっちが動くの? は?」
まるで大勢のオノマトペが口々に言っているようだが、ずっと一人で喋っている。
僕は気を取り直して、とりあえず自慢だけでも聞くため、
「チクチクの自慢を教えてほしいんだ。何が楽しいと感じるとか知りたくて」
すると矢継ぎ早にチクチクが同じトーンの小声で、
「は? 何か会話しようとしてくるし、キモ」
「というか自慢が無さそうに見えるから聞いてきてるわけ? は? 意味分かんない」
「というか楽しくないヤツと何でそんな会話しないといけないの?」
僕は困ってしまい硬直してしまうと、スタッフが、
「いや一応一対一でトークというコーナーだからね」
と割って入ったんだけども、チクチクの感じは変わらず、
「は? というかそれはそっちが勝手に決めたことでしょ? 意味分かんねぇ」
と言ったところで、ずっと床に座っていたスタッフの貧乏ゆすりが始まったと思ったら、一気にその貧乏ゆすりが酷くなり、そのスタッフは僕を睨みながら、
「何か会話したほうがいいよ」
と語尾は柔らかいけども、明らかにつっけんどんで、とげとげしく、まるで僕に八つ当たりするようにそう言ってきた。
参ったなぁ、と思いつつも、
「僕は対戦ゲームで自分の思い通りに勝てた時は作戦が上手くいったんだなぁ、と思って嬉しくなるよ。チクチクは何が楽しく感じる?」
と一応自分のほうを先に開示してみると、チクチクはさっきよりも小声で、
「は? 勝手に自慢し始めたし。意味分かんねぇ」
「というか勝手にオマエが仕切るなよ。キモ」
「というかこっちのペースとか考えられないのか?」
いやいや、そっちのペースと言ったって、ずっとチクチクと小言を言っているだけじゃないか、とはさすがに言えない。
そもそもドスドスもそうだったけども、友情リアリティーショーに参加しているということを分かっているのか?
多少は仲良くする素振りを見せるもんじゃないのか? こっちがそんなにおかしいのか?
こんなメンバーばかりなのか? というか選考していないのか? いやでも確かに僕も面接とかも無かったしなぁ……僕が普通過ぎて面接パスだったわけじゃなくて、全員無かったんだ……なんてずさんな番組なんだ。
このあともずっとチクチクの小言を聞くだけで終始してしまい、スタッフもすごくイライラしているようで怖かった。
終わったところでまたチクチクが外に出ていくようで、その時にもまた、
「は? というか何で小生が動く側? 意味分かんねぇ」
と文句を垂れながら教室から出て行った。
チクチクを外に促したスタッフが座っている僕を見下すように、
「もうちょっとちゃんと会話してください」
と言ってきて、いやいやそんなん無理でしょと思った。
なんというか、ここのスタッフもところどころ嫌だなぁ、と思うところがある。違和感というか、別にちゃんとした大人じゃないというか。
こんな悪い意味で個性的な子供のオノマトペを集めといて、それをちゃんとまとめ上げられるビジョンのようなものは一切感じない。
本当に大丈夫なんだろうか、と思ったところで、次の、ヌメヌメがやって来た。
ヌメヌメは挙動不審そうに周りを見渡しながら、目を泳がせながら、目の前に座った。
さて、どうする。
また自慢話を聞くか、それとも方法を変えるか。
自慢話という言い方がみんなを刺激させるのかもしれない。もっと軟化させて、好きなこととかでいいのかもしれない。
つい距離を早く詰めようとし過ぎていたかも。ここはもっとじっくりやっていっていいのかもしれない。どうせ二分でオノマトペなりを知ることは不可能だ。
それよりもこの二分をなんとか安全に過ごすことを一番に考えてもいいのかもしれない。
相も変わらずというか、なんというか、向こうから何か喋ってくることはない。
僕は深呼吸してから、
「ヌメヌメの好きなことって何だい?」
ヌメヌメはスタッフの顔色を見始めて、ずっと座っているスタッフはさっきのイライラを持ち越した状態で、怖い顔をしているし、貧乏ゆすりもすごい。それを見て委縮したんだろう。ヌメヌメは結局何も言わずに俯くだけで、僕は無視された状態になった。
つい僕も、でもあの座っているだけのスタッフを見てもしょうがないので、カメラマンのスタッフと膝立ちしているスタッフの顔色を見ると、こくこくと頷いて、もっと喋っても大丈夫みたいなアクションをされた。
確かにこのヌメヌメは攻撃性が皆無みたいだ。
僕ももう一押しするか。
「僕は対戦ゲームが好きで、よくテレビゲームをしているんだけども、ヌメヌメはどうかな?」
でもヌメヌメは首をキョロキョロ動かして、窓のほうを向いたらそのまま全然こっちへ首を動かさなくなって、またしても無視されてしまった形になった。
だからって攻めることはしない。だって攻めたら印象悪いだろうし、何よりもヌメヌメは首筋にまで汗をかいて、窓の外を見ているだけで、緊張しているようだったから。
これは無視というよりも、どうすればいいか分からず思考停止しているんだと思う。
そんな時に声を荒らげたりしたら、絶対に落ち込むだろうし、そもそももう怒鳴られたあとの可能性だってある。
もし僕がドスドスと会話している時の一回目、ヌメヌメの相手がチクチクだった場合、もう心を閉ざしていてもおかしくない。僕もあれは限界だった。
そうだな、ここは僕が喋る感じがいいかな。
「あの、じゃあ僕の話を聞いて欲しいんだ。頷くだけでいいから、こっちを向いてくれないかな。いや振り向かなくてもいいよ、聞いてくれるだけでいいから」
そこから僕が得意とする、特に中身の無いペラペラトークを展開させて、時間が経った。
最後にまたヌメヌメのほうがスタッフに促されて出て行ったわけだけども、出て行く直前に、
「話を聞いてくれて有難うね」
と言うと、一瞬頷いてくれたような気がした。あくまで気がした程度だけども。
でもさっきの2オノマトペから比べると、まだマシというか、言い方悪いかもだけども与しやすい子だった。
仲良くなれる隙はあるというか。でももっと向こうも好意的な子たちばっかだと思ったら、こんな感じばっかりで何かなぁ。
・【02 一対一でトークする】
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机が端にどかされて、イスが二脚真ん中にある教室にやってきた僕。カメラを構えているスタッフと、膝立ちしているスタッフと、座っているスタッフの3オノマトペで、人数は最小限って感じで、そんなに予算が潤沢にある感じではなさそうだ。
僕が先に部屋のイスに着き、そのあとドッスドッスと強い足音でドスドスがやって来た。
うわー、初っ端からドスドスだぁ、と思っていると、ドスドスがイスに座りながら、
「何か不満か? 偉そうだな」
と偉そうな声でそう言った。
というかドスドスって、ぶっきらぼうで鈍感なほうだと思ったら、僕の顔の機微に反応できるんだ、気を付けないと。
「いやいや、ちょっと存在感があってビックリしているだけだよ」
と若干褒めるような言い方でそう言うと、ドスドスは分かりやすく機嫌良さそうに、
「まあな、おれはこんな連中の大将になれる器だからな」
こんな連中って……不遜過ぎる。
自分はもう大将のつもりでいるんだ、でも僕だってリーダーシップをとりたいし。
ここは適当におだてるのも良くないかもしれない。おだて過ぎたら、ただの太鼓持ちになってしまう。意識が格下になることは避けたい。
相も変わらず僕は脳内でペラペラ考える。でもそれこそが僕の最大の武器だと思うから。
「ところで、ドスドスの自慢ってなんだい?」
「おれの自慢かぁ、よく聞いておけよ」
……普通、自慢話を聞かされることは嫌なこととされているが、僕は自慢をしっかり引き出したいと思っている。
何故なら自慢にはその人の”好き”が詰まっているから。オノマトペなりを知るにはまずは自慢を聞くこと、それこそ僕が考えた最適解だ。
逆にその自慢で触れなかったところが興味の無い部分になる。ちなみにあとから”苦手な雰囲気”を聞く予定だ。苦手もその人の性格が詰まっているものだから。ただし絶対に自慢から聞き、良い気持ちになってもらってから「逆に苦手な雰囲気はどう?」と聞く。それが鉄則。
あとは両方に同調するように頷くこと。人は同意されるだけで心が開かれるものだから。特に苦手のほうはそのまま一緒に悪口を言い合う感じのほうが仲良くなりやすかったりするものだ。
さて、ドスドスはどんな自慢を言うか。高圧的そうな性格だし、得意なスポーツで圧勝した系かもしれない。金メダルを獲ったとかそんな感じだろう。
ドスドスはおもむろに口を開き、
「うるせぇこと言ってくるヤツを殴って黙らせた、かな。やっぱそういうのがマジで痛快なわけだよ」
僕は絶句してしまった。まさか自慢で暴力行為、というか犯罪行為を自分から喋るなんて思ってもいなかった。
僕の気持ちなんて露知らず、ドスドスは気分良さそうに喋り続ける。
「やっぱさ、うるせぇ格下の話なんて聞いてられねぇじゃん、何か正義感ぶっているというか意味分かんねぇ、おれにはおれの正義があるわけだし、絶対的な悪なんて存在しないわけだし。だからおれは思い切り腹にドスドス殴ってやって、黙らせたのはホント気持ち良かったな」
そうフンスと鼻息を鳴らしたドスドス。え、え、こういう時って、どうすればいいの……教会以外で犯罪行為を吐露するオノマトペっているの? しかも全然悪いことと思っていなさそう。悪いことをしてやったというイキリだったら、まだ分かるけども、全然自分のこと正しいと思っている。かなりイカれている。
僕は何だかペラペラの能力を使おうとしていないのに、どんどん身体も心も薄く薄くなっているような気がした。否、実際体は薄くなってきている。そのままこの世から消えたいくらいの気持ち。こんなヤツが友情リアリティーショーに参加? でもそれを質問したら絶対嫌味みたいにとられるだろうから、それは聞かずに、予定通りのことを聞くか。
「逆に苦手な雰囲気とかある?」
するとドスドスの眼光は鋭くなり、前のめりになり、僕との距離が物理的に近くなったところで、
「まあそうだなぁ、そうやって苦手を喋らせて、弱みを握ろうとしてくるヤツだな」
僕は身体を仰け反ってから固まってしまった。全然そんなつもりで聞いたわけじゃないのに。
このオノマトペの物事の受け取り方、正直おかし過ぎる……。
でもこれはさすがに否定しないといけないと、と思って、
「そ、そんなつもりはないです……一緒だったら一緒に共感し合おうと思って……共感し合うことが仲良くなる一歩だから……」
もうちゃんと全部ネタバラシすることにした。ちゃんと言わないと、いやちゃんと言っても多分伝わらない相手だとは思うけども、言わなきゃ本当に僕が悪のままで終わるから。
ドスドスは鼻で笑ってから、
「オマエごときがおれと話が合うわけねぇだろ、住む世界が違うんだから」
いや一緒に友情リアリティーショーに参加している時点で住む世界全く一緒だけども……なんてことは言えない。
僕は愛想笑いをしてしまうと、急にドスドスは立ち上がり、
「おれのことを笑うんじゃねぇ!」
と言ってなんと座っている僕の爪先を蹴ってきたのだ。軽く掠るような蹴りだったので痛くは無かったんだけども、すごくビックリしてしまい、震えるよりも先に動けなくなってしまった。
すると膝立ちしているスタッフが間に入って、ドスドスを教室の外に出した。
僕はポカンと開いた口が塞がらないといった状態でいると、カメラのスタッフは満足げに頷き、ドスドスを外に出したスタッフは戻ってきて僕へ、
「あんまり喧嘩し過ぎないように」
と言ってきて、これ僕が悪いの? と思ってしまった。
僕は促されるまま、イスにずっと座っていると、今度はチクチクが入ってくるなり、
「小生が下手(しもて)?」
とちょっと大きな声で言って、こんなイスの座る位置に文句を言うオノマトペなんて小学生でいるんだと思って目を丸くしてしまった。
対面で座ってもずっとぶつぶつ何か言っている、というかこの距離だとさすがに聞こえてくる。
「何で下手(しもて)? は?」
「というか小生が歩いてきたのも分かんないし」
「は? オマエが小生のいた部屋に来いよ」
「というか何でこっちが動くの? は?」
まるで大勢のオノマトペが口々に言っているようだが、ずっと一人で喋っている。
僕は気を取り直して、とりあえず自慢だけでも聞くため、
「チクチクの自慢を教えてほしいんだ。何が楽しいと感じるとか知りたくて」
すると矢継ぎ早にチクチクが同じトーンの小声で、
「は? 何か会話しようとしてくるし、キモ」
「というか自慢が無さそうに見えるから聞いてきてるわけ? は? 意味分かんない」
「というか楽しくないヤツと何でそんな会話しないといけないの?」
僕は困ってしまい硬直してしまうと、スタッフが、
「いや一応一対一でトークというコーナーだからね」
と割って入ったんだけども、チクチクの感じは変わらず、
「は? というかそれはそっちが勝手に決めたことでしょ? 意味分かんねぇ」
と言ったところで、ずっと床に座っていたスタッフの貧乏ゆすりが始まったと思ったら、一気にその貧乏ゆすりが酷くなり、そのスタッフは僕を睨みながら、
「何か会話したほうがいいよ」
と語尾は柔らかいけども、明らかにつっけんどんで、とげとげしく、まるで僕に八つ当たりするようにそう言ってきた。
参ったなぁ、と思いつつも、
「僕は対戦ゲームで自分の思い通りに勝てた時は作戦が上手くいったんだなぁ、と思って嬉しくなるよ。チクチクは何が楽しく感じる?」
と一応自分のほうを先に開示してみると、チクチクはさっきよりも小声で、
「は? 勝手に自慢し始めたし。意味分かんねぇ」
「というか勝手にオマエが仕切るなよ。キモ」
「というかこっちのペースとか考えられないのか?」
いやいや、そっちのペースと言ったって、ずっとチクチクと小言を言っているだけじゃないか、とはさすがに言えない。
そもそもドスドスもそうだったけども、友情リアリティーショーに参加しているということを分かっているのか?
多少は仲良くする素振りを見せるもんじゃないのか? こっちがそんなにおかしいのか?
こんなメンバーばかりなのか? というか選考していないのか? いやでも確かに僕も面接とかも無かったしなぁ……僕が普通過ぎて面接パスだったわけじゃなくて、全員無かったんだ……なんてずさんな番組なんだ。
このあともずっとチクチクの小言を聞くだけで終始してしまい、スタッフもすごくイライラしているようで怖かった。
終わったところでまたチクチクが外に出ていくようで、その時にもまた、
「は? というか何で小生が動く側? 意味分かんねぇ」
と文句を垂れながら教室から出て行った。
チクチクを外に促したスタッフが座っている僕を見下すように、
「もうちょっとちゃんと会話してください」
と言ってきて、いやいやそんなん無理でしょと思った。
なんというか、ここのスタッフもところどころ嫌だなぁ、と思うところがある。違和感というか、別にちゃんとした大人じゃないというか。
こんな悪い意味で個性的な子供のオノマトペを集めといて、それをちゃんとまとめ上げられるビジョンのようなものは一切感じない。
本当に大丈夫なんだろうか、と思ったところで、次の、ヌメヌメがやって来た。
ヌメヌメは挙動不審そうに周りを見渡しながら、目を泳がせながら、目の前に座った。
さて、どうする。
また自慢話を聞くか、それとも方法を変えるか。
自慢話という言い方がみんなを刺激させるのかもしれない。もっと軟化させて、好きなこととかでいいのかもしれない。
つい距離を早く詰めようとし過ぎていたかも。ここはもっとじっくりやっていっていいのかもしれない。どうせ二分でオノマトペなりを知ることは不可能だ。
それよりもこの二分をなんとか安全に過ごすことを一番に考えてもいいのかもしれない。
相も変わらずというか、なんというか、向こうから何か喋ってくることはない。
僕は深呼吸してから、
「ヌメヌメの好きなことって何だい?」
ヌメヌメはスタッフの顔色を見始めて、ずっと座っているスタッフはさっきのイライラを持ち越した状態で、怖い顔をしているし、貧乏ゆすりもすごい。それを見て委縮したんだろう。ヌメヌメは結局何も言わずに俯くだけで、僕は無視された状態になった。
つい僕も、でもあの座っているだけのスタッフを見てもしょうがないので、カメラマンのスタッフと膝立ちしているスタッフの顔色を見ると、こくこくと頷いて、もっと喋っても大丈夫みたいなアクションをされた。
確かにこのヌメヌメは攻撃性が皆無みたいだ。
僕ももう一押しするか。
「僕は対戦ゲームが好きで、よくテレビゲームをしているんだけども、ヌメヌメはどうかな?」
でもヌメヌメは首をキョロキョロ動かして、窓のほうを向いたらそのまま全然こっちへ首を動かさなくなって、またしても無視されてしまった形になった。
だからって攻めることはしない。だって攻めたら印象悪いだろうし、何よりもヌメヌメは首筋にまで汗をかいて、窓の外を見ているだけで、緊張しているようだったから。
これは無視というよりも、どうすればいいか分からず思考停止しているんだと思う。
そんな時に声を荒らげたりしたら、絶対に落ち込むだろうし、そもそももう怒鳴られたあとの可能性だってある。
もし僕がドスドスと会話している時の一回目、ヌメヌメの相手がチクチクだった場合、もう心を閉ざしていてもおかしくない。僕もあれは限界だった。
そうだな、ここは僕が喋る感じがいいかな。
「あの、じゃあ僕の話を聞いて欲しいんだ。頷くだけでいいから、こっちを向いてくれないかな。いや振り向かなくてもいいよ、聞いてくれるだけでいいから」
そこから僕が得意とする、特に中身の無いペラペラトークを展開させて、時間が経った。
最後にまたヌメヌメのほうがスタッフに促されて出て行ったわけだけども、出て行く直前に、
「話を聞いてくれて有難うね」
と言うと、一瞬頷いてくれたような気がした。あくまで気がした程度だけども。
でもさっきの2オノマトペから比べると、まだマシというか、言い方悪いかもだけども与しやすい子だった。
仲良くなれる隙はあるというか。でももっと向こうも好意的な子たちばっかだと思ったら、こんな感じばっかりで何かなぁ。



