時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

「当たり前じゃないですか。私が恋をした人は三人いますが、結局全部ジェイクだったんですよ。忘れても忘れても、彼を見たら私は確実に恋に落ちます。やっと捕まえたんですよ、邪魔しないでください」

 万が一ロイと恋をした気になっていたとしても、ジェイクが現ればロイなんて見えなくなる。例えジェイクがシャロンを見てくれなくても……。

 と、突然後ろから抱きしめられた。

「えっ? ジェイク?」

 腕が震えてるのは笑いをこらえているからだろうか?

「シャロン、自分を犠牲にするのは禁止」

 怒られた。

「ごめん。そうよね、だめよね」

 そんなことをしても嬉しくないことは実感していたはずなのに。
 しょんぼりするシャロンの頬にジェイクが柔らかい口づけをする。

「ロイ、諦めてくれ。ぼくは彼女を渡さないって言っただろう」
「こんなことならおまえに協力するんじゃなかったって、心底後悔してるよ」

 長年の片恋を笑ってやるつもりできたのにと冗談ぽく笑うロイに、シャロンは
「いいえ、多分感謝しますよ」
 と笑った。

「今は間違った道にいるからそんな気持ちになってるだけです」
「どうしてそんなことが分かるのです?」

 ロイの問いにシャロンはただ笑って受け流す。本当にこれが正しいのか不安がないといったら嘘になる。でも正しい道だと信じるしかない。

 今日、試合の合間と晩餐の時にロイにはテオドラを見せた。それを記憶してはいないはずだが、彼がカロンに見せるよりも強い感情を見せるのは、シャロンを通して見せた姉の姿の前だけだ。今はテオドラのいるはずの場所にシャロンしかいないから間違えているに過ぎない。その証拠に惹かれてると言いながら違和感を覚えていることが分かるから。

「テオドラに会ったら分かります。もう私のことなんて全くかすんで見えなくなりますよ! 可愛いんですから!」

 顔は似ているが、おっとりとした真正のお姫様だ。カロン姫はテオドラを模倣したに過ぎない、それほど理想の女の子。

「彼女を探すのに殿下の力が必要なんです」
「ほう?」

 実は少し予想している場所もあるのだが、それにもロイが必要なのは変わりない。
 面白そうに顎を撫でるロイをうかがうと、彼はちらりとジェイクとシャロンを見て少し意地悪そうな笑顔になった。

「もしテオドラ姫を見ても、私の気持ちが変わらなかったら?」

 そんなことは万に一つもありえない。
 シャロンがそう言おうとするのをジェイクが制し、
「その時は正々堂々と戦おう」
 と口の端をあげた。

 ――男ってやつは……。

 なぜか面白そうに目を輝かせるゼノンの隣で呆れたような表情のエルザと目を合わせ、シャロンはやれやれと首を振る。おかげで絶対正常な未来に戻すと決意しつつも、少しだけ怖かった気持ちがずいぶんと和らいでしまった。