時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 紅蓮の館までの道のりを、今度は五人で歩く。
 昨夜はジェイクに抱かれたまま走り抜けた道だが、実際に歩くと道があるのか分からないくらいの鬱蒼とした暗い森だ。でも木々はシャロン達のために道を開け、きちんと館まで送ってくれることが分かる。その当たり前の見慣れた光景にシャロンはホッと息をついた。

 歩き始めたとき偶然ジェイクの手の甲がシャロンの手に触れたので、そのまま手をつないだ。キュッと握り返してくれる、それだけで不安な気持ちが和らぐ。
 歩きながらロイに説明をすることにした。

「殿下は、私が紅蓮の館に住む魔女だとご存知なんですよね?」

 念のため尋ねると、ロイはチラッとつながれた手を見て肩をすくめる。

「ええ。一度会いたいと思っていました」

 なんだか色々含みがあるような気がしたが、前世や二年前にチラッと見た様子から、ジェイクから話を聞いていたものと判断した。

「今回の宴は、本当はテオドラ姫のものでした」

 少し考えてから、回り道をせず手短に事情を話すことに決めてそう切り出すと、ロイは「テオドラ姫?」と不思議そうな顔をする。

「ええ。この国の、本当の末の王女です」
「姫様!」

 悲鳴のようなエルザの声にシャロンは一瞬目を閉じる。

「テオドラは末の姫カロンの姉。カロンは十五年前に死んだ。この国ではそういうことになっていたのですよ、殿下」

 エルザたちの言葉を制し、実際自分がカロンでありテオドラの妹であること。そして十五年前に攫われ、自分が死んだと思われていたことを簡単に説明した。

「だが私はネイディア王家より正式に、末の姫であるカロン姫の宴に……」
「そうですね。でも私と姉の誕生日は同じ日ですけど、本来快気祝いと誕生祝い、そして夫を探すのはテオドラのはずでした。カロンではない」

 入れ替わってしまった王女。
 でもこれは十年前、ジェイクが時をかけたがために起こった未来だ。もともと明日はジェイクの結婚式で、ロイはそちらに出席している。やり直したがために起こった、いや、起こるはずだった本当の未来は――

「殿下はそこでテオドラ姫と出会い、二人は恋に落ちるはずでした」
「何を一体……」