◆
実際シャロンと出会ったとき、ジェイクは迷子だった。
リュージュの森の狩場ではぐれ、馬からも落ちてしまった。その馬も勝手にどこかに行ってしまい途方に暮れてたところ、この館を見つけたのだ。噂で森に今、魔女の館があることは知っていた。気まぐれに移動している館は英知と繁栄の象徴ともうわさされ、館がいる間は、その土地に平和が訪れると言われている。
特にこのラゴンでは、その館に特別な意味を持っていたのだ。
だがその館に入ることが出来るのは選ばれたごくわずかの者だけで、けっしてたどり着けないから森の奥に入ってはいけない。ジェイクは大人たちから口を酸っぱくしてそう言われていた。
もし自分がたどり着いて、しかも中に入ったと言ったら、みんなはどんな顔をするだろう。しかもそこには、いないと思われていた魔女がいて、しかもそれがあの“白き魔女”みたいだったなんて言ったら、きっとみんな驚くだろうな。
「ぼくは選ばれたものなのかな」
興奮する気持ちを隠しても隠し切れないジェイクに、シャロンは大まじめな顔をした。
「ここは、傷ついたり迷子になった動物もくるのよ」
ようは、お前は迷子だから偶然たどり着いたというわけだ。その容赦のなさにジェイクは「チェッ、わかってるよ」と唇を尖らせる。
その後、シャロンは町に行くついでに森の出口までジェイクを送っていった。
また会えるかと聞かれ、曖昧に言葉を濁す。たぶん、もう彼は館にたどり着けないだろうから。
ただ、自分に会ったこと、館のことは絶対誰にも言ってはいけないことだけ約束をさせた。一瞬残念そうな目をしたジェイクだが、口元を引き結んでしっかり頷く。
「わかった。じゃあ、ぼくたちもう友だちだ!」
「友だち?」
知ってはいるが初めて耳にした言葉に、シャロンが目をぱちくりさせて首をかしげる。ジェイクは一瞬彼女をからめとるような眼差しをし、次の瞬間にっこり笑った。
「うん。秘密を共有するのは家族か親友だけだろう? だから友だち!」
「ああ、うん、そうかもね」
あまりに目を輝かせながらそう言うジェイクに、シャロンはつい頷いてしまう。
友だちや親友なんて、物語の中にだけいるものだと思っていた。その言葉に、笑顔に、胸の奥にポッと何か色づいたのは気のせいだろうか。
「またね、シャロン!」
手を振って森を出るジェイクに手を振り返し、その姿が見えなくなった途端なぜか寂しくなる。
「またねだって。そんなこと、もうないのに……」
人は普通、館に来ることはできないのだから。
にぎやかな市場で野菜と香辛料を交換したけど、いつもなら楽しいのに、今日はちっとも楽しくなかった。きれいなボタンを見ても心が弾まなかった。市場でおしゃべりする気にもなれないのに、なぜか無性に寂しかった。
だがその二日後――。
「シャロン、来たよ!」
ジェイクは当たり前のような顔をして館に顔を出したのだ。
実際シャロンと出会ったとき、ジェイクは迷子だった。
リュージュの森の狩場ではぐれ、馬からも落ちてしまった。その馬も勝手にどこかに行ってしまい途方に暮れてたところ、この館を見つけたのだ。噂で森に今、魔女の館があることは知っていた。気まぐれに移動している館は英知と繁栄の象徴ともうわさされ、館がいる間は、その土地に平和が訪れると言われている。
特にこのラゴンでは、その館に特別な意味を持っていたのだ。
だがその館に入ることが出来るのは選ばれたごくわずかの者だけで、けっしてたどり着けないから森の奥に入ってはいけない。ジェイクは大人たちから口を酸っぱくしてそう言われていた。
もし自分がたどり着いて、しかも中に入ったと言ったら、みんなはどんな顔をするだろう。しかもそこには、いないと思われていた魔女がいて、しかもそれがあの“白き魔女”みたいだったなんて言ったら、きっとみんな驚くだろうな。
「ぼくは選ばれたものなのかな」
興奮する気持ちを隠しても隠し切れないジェイクに、シャロンは大まじめな顔をした。
「ここは、傷ついたり迷子になった動物もくるのよ」
ようは、お前は迷子だから偶然たどり着いたというわけだ。その容赦のなさにジェイクは「チェッ、わかってるよ」と唇を尖らせる。
その後、シャロンは町に行くついでに森の出口までジェイクを送っていった。
また会えるかと聞かれ、曖昧に言葉を濁す。たぶん、もう彼は館にたどり着けないだろうから。
ただ、自分に会ったこと、館のことは絶対誰にも言ってはいけないことだけ約束をさせた。一瞬残念そうな目をしたジェイクだが、口元を引き結んでしっかり頷く。
「わかった。じゃあ、ぼくたちもう友だちだ!」
「友だち?」
知ってはいるが初めて耳にした言葉に、シャロンが目をぱちくりさせて首をかしげる。ジェイクは一瞬彼女をからめとるような眼差しをし、次の瞬間にっこり笑った。
「うん。秘密を共有するのは家族か親友だけだろう? だから友だち!」
「ああ、うん、そうかもね」
あまりに目を輝かせながらそう言うジェイクに、シャロンはつい頷いてしまう。
友だちや親友なんて、物語の中にだけいるものだと思っていた。その言葉に、笑顔に、胸の奥にポッと何か色づいたのは気のせいだろうか。
「またね、シャロン!」
手を振って森を出るジェイクに手を振り返し、その姿が見えなくなった途端なぜか寂しくなる。
「またねだって。そんなこと、もうないのに……」
人は普通、館に来ることはできないのだから。
にぎやかな市場で野菜と香辛料を交換したけど、いつもなら楽しいのに、今日はちっとも楽しくなかった。きれいなボタンを見ても心が弾まなかった。市場でおしゃべりする気にもなれないのに、なぜか無性に寂しかった。
だがその二日後――。
「シャロン、来たよ!」
ジェイクは当たり前のような顔をして館に顔を出したのだ。



