ジェイクは自分の腕の中にいるシャロンの髪に頬を埋めた。
腕の中にいる最愛の人は、何よりも愛しくていじらしくて、ジェイクが思い込んでいたよりもずっと繊細で傷つきやすい女性だ。自分はいったい何を見ていたのだろうと思う。こんなにも想われていることに気づきもせずに、何度も何度も傷つけた。
想像もしなかったほど彼女に愛されていた事実に心が震えた。同時にシャロンが自分以上の地獄を見たこと、それを防げなかったことに歯噛みした。
十年前、腕の中で最期に彼女が満足げに微笑んだ理由が分かり、再び気が狂いそうな気がした。あの笑顔を見て、初めて自分の気持ちに気づいたのだから。
後ろにミネルバがいることを忘れていたら、我を忘れて思わず怒鳴りつけていたかもしれない。
彼女がジェイクの愛から逃げようとしたのは、すべて自分のせいだ。思い返せば思い返すほど、何から何までジェイクのせいでしかなく、あんなにも自信なさげで不安そうなシャロンを二度と見たくないと思う。
これがほかの男のことなら、「そんな奴やめてぼくにしろ」と言いたいところだが、情けないことに「そんな奴」こそがジェイク自身なのだ。面《おもて》に出さないように気を付けてはいるが、実はけっこう落ち込んでいる。
死に物狂いで口説いたが、冷静に振り返れば、こんな男をよくも愛してくれたと思う。
――絶対大事にしよう。誰よりも何よりも大切にしよう。
長い抱擁のあと、ふっと力が抜けたシャロンの髪を撫でると、ミネルバが「もう休んだ方がいいでしょう」と言った。
今から帰っても睡眠時間はかなり少ないが、本音を言えばまだこうしていたかった。だがシャロンが「泊っていったほうがいいかしら?」と呟いたときには、年甲斐もなくドギマギとして挙動が怪しくなり、変なことを言い出さないよう、膝の上でこぶしを握った。
「ミネルバ。救護室のカプセルは今使える?」
「いえ、今は整っておりません」
「‥‥‥そう。残念」
二人の会話にジェイクが首をかしげると、明日の親善試合のために、短時間で熟睡できる何かを使わせてくれるつもりだったことが分かった。
「燃料的にも管理的にも色々不具合が出てるみたいだから、それもどうにかしないとね」
そう言って少し息をついたシャロンはジェイクに向き直り、改まった様子で口を開いた。
「ジェイク、あのね」
「うん」
腕の中にいる最愛の人は、何よりも愛しくていじらしくて、ジェイクが思い込んでいたよりもずっと繊細で傷つきやすい女性だ。自分はいったい何を見ていたのだろうと思う。こんなにも想われていることに気づきもせずに、何度も何度も傷つけた。
想像もしなかったほど彼女に愛されていた事実に心が震えた。同時にシャロンが自分以上の地獄を見たこと、それを防げなかったことに歯噛みした。
十年前、腕の中で最期に彼女が満足げに微笑んだ理由が分かり、再び気が狂いそうな気がした。あの笑顔を見て、初めて自分の気持ちに気づいたのだから。
後ろにミネルバがいることを忘れていたら、我を忘れて思わず怒鳴りつけていたかもしれない。
彼女がジェイクの愛から逃げようとしたのは、すべて自分のせいだ。思い返せば思い返すほど、何から何までジェイクのせいでしかなく、あんなにも自信なさげで不安そうなシャロンを二度と見たくないと思う。
これがほかの男のことなら、「そんな奴やめてぼくにしろ」と言いたいところだが、情けないことに「そんな奴」こそがジェイク自身なのだ。面《おもて》に出さないように気を付けてはいるが、実はけっこう落ち込んでいる。
死に物狂いで口説いたが、冷静に振り返れば、こんな男をよくも愛してくれたと思う。
――絶対大事にしよう。誰よりも何よりも大切にしよう。
長い抱擁のあと、ふっと力が抜けたシャロンの髪を撫でると、ミネルバが「もう休んだ方がいいでしょう」と言った。
今から帰っても睡眠時間はかなり少ないが、本音を言えばまだこうしていたかった。だがシャロンが「泊っていったほうがいいかしら?」と呟いたときには、年甲斐もなくドギマギとして挙動が怪しくなり、変なことを言い出さないよう、膝の上でこぶしを握った。
「ミネルバ。救護室のカプセルは今使える?」
「いえ、今は整っておりません」
「‥‥‥そう。残念」
二人の会話にジェイクが首をかしげると、明日の親善試合のために、短時間で熟睡できる何かを使わせてくれるつもりだったことが分かった。
「燃料的にも管理的にも色々不具合が出てるみたいだから、それもどうにかしないとね」
そう言って少し息をついたシャロンはジェイクに向き直り、改まった様子で口を開いた。
「ジェイク、あのね」
「うん」



