時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

「おいしい」

 果実水はよく冷えてるし、菓子は思った通りカロン好みの味だった。一気に食べるのがもったいなくて、つい一口一口小さくかじっていると、隣で笑いを堪えている気配を感じる。
 チラリと見ると、すでにジェイクは菓子も果実水も平らげたようで、面白そうにカロンを見ていた。

「やだ、すみません。急いで食べますね」

「いや、ゆっくりお食べよ。ぼくは早く食べる習慣ができてるだけだからね。急ぎの用なんてないんだから、じっくり味わって」

「でも……」

「君がおいしそうに食べてくれるから嬉しいんだよ」

「そ、それじゃあ、お言葉に甘えます」

 とはいえ、見られていることを意識してしまうと、どぎまぎして味がよくわからなくなってしまう。チラッと彼を見ると、今はのんびり道行く人を見ているので安心して味わうことにした。

 屋台裏の空間は結界でも張ってるかのように人気がない。そこへじゃれ合いながら小さな男の子と女の子の二人駆け込んできた。兄妹だろうか。手に菓子を持ったまま走っていた女の子が勢いよく転びそうになった。

「あっ、あぶない!」

 思わずシャロンが立ち上がると同時に、ジェイクはすでに女の子がケガをしないよう抱き留めている。電光石火の早業だ。

 女の子は彼に抱き止められると、キョトンとして動きが止まる。次の瞬間顔を上げると、何か良いものを見たかのように満面の笑みを浮かべた頬には、可愛いエクボができていた。

「おにいちゃん、あいがとぉ」

 舌っ足らずの可愛い声で、女の子がぺこりと頭を下げると、お兄ちゃんらしき男の子も「ありがとう」ともじもじしながら言う。そのあまりの可愛らしさにカロンの頬が緩むと、ジェイクも優しい笑顔を見せた。

 そのとき若い母親らしき女性が汗だくで走ってきて、「まああ、すみません! こら、走ったら駄目だって言ったでしょう」と言い、ペコペコ頭を下げながら子どもたちを連れて行った。はぐれた子どもたちを探していたようで、男の子は少し気まずげだったが、女の子のほうはいつまでも振り向いて手を振り続けていた。

「お母さんも大変だな」

「そうですね。汗だくでしたし、たくさん探したのでしょうね。見つかってよかったです」

 たぶんあの女の子は、もう少しここにいたかったのだろうけど。

「ライクストン様は、小さな女の子にもモテモテ」

 女の子の表情を思い出しカロンがクスクス笑うと、ジェイクが困ったような顔になる。その表情がおかしくて、カロンは笑いが止まらなくなった。

「参ったな。その、なんだ。気のせいだ」

「何がですか?」

「ぼくは、別にモテたりしないよ」

 本気で言っているのか、情けなく眉を下げる様にカロンはびっくりした。嘘でしょう?