時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

「ほら、やっぱりこっちのほうが似合います。こっちにしましょう!」

 適当に服を選ぼうとするジェイクに、カロンは次々と目についたシャツを押し付けては試着させた。
 ネイディアの服は長袖でゆったりした形のものが多い。さらっとした素材は汗をよく吸うが肌に張り付かず暑い昼でも快適に過ごせるのだ。色味は白系の薄い色か、南国の花のような色鮮やかなものが多い。
 ジェイクの国の人が着る服は暗い色で無地のものが主流のようで、色鮮やかな布の海に目をぱちくりさせる姿がカロンはおかしかった。

「花柄を選ばれたらどうしようかと思ったよ」

 ジェイクが店主の大きな花模様の服を横目に、小さな声でぼやくのが聞こえる。
 だが筋肉でがっちりした彼が店主と同じ服を着たところをカロンは想像し、
「それも悪くないですね」
 と言うと、ギョッとしたように身を引かれてしまった。

 ――意外と似合いそうなんだけどなぁ。

 服を選ぶ間、無意識に何度かお姉さんぶった物言いをしてしまったことに気づき、カロンは内心慌てた。普段はそんな言い方をしないはずなのに、どうも気を抜くと強気な発言になってしまうらしい。彼は決して、弟のような存在や年下には見えないのに……。

 だがジェイクはカロンの言葉に、一々面白そうに目を輝かせて笑ってくれるため、もうこれが素ってことでもいいかしら? などと思い始めていた。
 自分の元の性格はよく分からない。だが、ジェイクの前でのカロンはこれでいいんじゃないかと思うのだ。
 結局シャツは、生成りと白、それから水色の三枚を購入することにした。

「この白いシャツは着ていくから、着てきたものは一緒に包んでくれるかい」

 ジェイクが頼むと、売り子の少女がほんのり頬を染めて丁寧に対応してくれる。話し方も仕草も柔らかいためか、売り子の彼女だけではなく、買い物客までがチラチラと彼を見ていることにカロンは気付いた。

「ライクストン様は、モテますね」

 店を離れてそう感想を漏らすと、ジェイクはギョッとした顔でまじまじとカロンを見るので首をかしげる。何かおかしなことを言っただろうか。

 次は約束通り焼き菓子の屋台を見に行く。
 ずらっと並ぶ色々な素材が練りこまれた焼き菓子に、どれを選ぼうかとワクワクした。

「ブランシュは、これなんか好みそうな気がするな」

 ジェイクが指さしたのは、赤い果実が練りこまれた菓子だ。見た目も可愛いし、思わずこくんと喉を鳴らすほどおいしそうに見える。

「じゃあ、私はそれにします」

 お金を出そうとすると、
「ここはぼくに出させてくれ。服を選んでくれた礼だ」
 と止められてしまった。礼をされる程のことはしていないが、ここは素直に甘えておこうと思いなおす。

「じゃあ、ご馳走になります」

 とニッコリすると甘酸っぱい果実水も買ってくれ、屋台裏の木陰にある椅子に腰を掛けて食べることにした。