シアとクロウの結婚式は厳かで素晴らしかった。侍女たちが頑張ったのだろう。白いリボンを花のように髪に編み込んだシアは本当に女神のように光り輝いていて、騎士正装黒衣のクロウと並ぶと息を呑むほど美しかった。
その後みんなでダンスを踊り、振る舞われたご馳走を堪能する。
まわりから魔女からも祝福をもらえないかとふられたので、シャロンは幻の花吹雪を部屋に散らした。それは手に触れることのできない光の花だが、幻想的な花吹雪が止むと、大喝采が起こった。
その後クロウがシアを伴ってシャロンのそばにやってきた。
「魔女シャロンに感謝を示しても宜しいだろうか」
その意味がよくわからないままシャロンが頷くと、クロウはシャロンの手を取り爪の先に口づけを落とす。その後シアがその手を同じように掲げ、自分の額につけた。
「あなたに幸福が訪れますように」
二人にそう言われ、心の中がくすぐったくなる。シャロンの素の姿のままなのにとても大人扱いされた気持ちだった。
「お二人にも、幸福がたくさん訪れますように」
結婚式には王族も参列していた。
クロウのために正騎士が何人かと、王の末の妹が王の代理として祝いに駆けつけたのだ。
おかけで領主の緊張と興奮はすごいものだったらしく、酒を飲みすぎたのか早々の退場になってしまった。
「普段はそんなに弱くはないんですよ」
介抱したほうがいいだろうかと心配するシャロンに、そばにいた従僕が心配いらないと首をふる。領主はすぐに赤くなるが酒に弱くはないそうだ。小一時間も休めば元気に戻ってくるのだと。
「今日は、よほど嬉しかったのでしょう。あなたも来てくれましたしね」
その優しい言葉に、シャロンは微笑んだ。
この土地の人間は、自分にとても優しい。
初代の白き魔女がどんな人物かは知らないが、シャロンは彼女にとても感謝していた。大人になったら、ミネルバは彼女のことを教えてくれるだろうか?
宴会は深夜まで続く。
大人たちはゲームに興じたり、酒を飲み続け大きな声で話したりしていた。ジェイクは次々に大人につかまっては、ゲームや話の相手をさせられていたが、如才なく対応する姿にシャロンは感心していた。本当に彼は、自分よりずっと大人なのかもしれない、と。
紅蓮の館にいるときと全然違う姿に、頼もしいような寂しいような気持ちになる。せっかく楽しみにしていた宴なのに、ジェイクとはあまり話もできてないのだから。
シャロンのほうも次々に声をかけられるが、寂しいものは寂しいのだ。
人が途切れたときにそっとバルコニーに抜け出すと、満点の星空が広がっていた。澄んだ空気に吐く息が白い。
「私とも、もう少し遊んでくれてもいいのにね?」
誰もいないのをいいことに、ちょっとだけ愚痴る。彼は領主の息子であり、次期領主妻の弟という立場だ。シャロンの中の大人の部分が、ただ遊びに来たシャロンとは違うのとたしなめる。だがそれはわかってはいるものの、つまらないと思うものは仕方がない。ジェイクはシャロンにとって、ミネルバ同様家族なのだから。
温かい息が手のひらにあたり驚くと、いつの間にかデュランがそばに来ていてシャロンは歓喜した。
「まあ、デュラン! 来てくれたの? 嬉しいわ」
彼の首に抱きつき顔をうずめると、その暖かさに癒やされる。
「もうすぐ貴方ともしばらくお別れね。さみしいわ」
シャロンの言葉に、デュランは珍しく甘えるような声を出した。
素直に体温を確かめ合う唯一の存在と離れ離れになるのは、想像していたよりもつらい。今回は一か月などの期間限定ではないのだから。
「大好きよ、デュラン。私のことを忘れないでね」
デュランは城に残らず、ジェイクと共に行くことが許されているそうだ。
「羨ましいな」
ぽつりとつぶやくと「何が羨ましいんだい?」とハスキーな声が降ってきた。



