時をかけた騎士と紅蓮の館の白き魔女

 従僕の少年にシャロンが案内されたのは、半地下になっている大広間だった。
 往診に何度も訪れた城だが、初めて入る場所である。
 階段上から見下ろす六角形の大広間の壁には、厚手の幾何学模様が美しいタペストリーが何枚も掛けてある。天井近くにはやはり何枚もの鏡が貼ってあり、シャンデリアの光を反射している。広間にはすでに美しい装いの男女が何人か歓談していて、その美しい光景にしばし見惚れた。

 そこにジェイクが大股に歩いてきた。

「シャロン、よく来たね。――とても綺麗だ」

 目を細めて褒められ、シャロンは頬が熱くなる。
 ドレスは持っててもめったに着ないので、おかしくないかとても心配だった。髪も何度も編み直してミネルバに呆れられたものだ。
 でもジェイクの言葉でほっと肩の力が抜け、シャロンはにっこり微笑んだ。

「ジェイクもとても素敵。大人っぽく見えるわ」

 準正装らしいその姿は、ジェイクを凛々しく男らしく見せた。
 いつもの少しやんちゃな姿とは違って、うっとりするくらいの男ぶりである。

「ありがとう。じゃあお嬢さん、お手をどうぞ」

 ジェイクに手を差し出され、シャロンはドキドキしながらその手を取った。一緒に階段を下りながらも、つい横目でチラチラと彼を見てしまう。

「ちゃんと足元を見てないと危ないよ」

 ジェイクに注意され、慌てて足元を見るが、盗み見していたのがばれていたことに頬が熱くなった。
 いつもと違う服装、雰囲気にどうにもどぎまぎしてしまう。
 ジェイクは少し背が伸びたのだろうか。前より視線が上になっていることにふと気づいたシャロンは、広間に降りるとジェイクの身長を目測した。

「なに?」

 ジェイクは怪訝そうな顔をしたが、やはり彼はシャロンより少し背が高くなっている。鍛えてるため広くなった肩幅は、準正装のせいかより彼の男らしさを強調しているようだ。

 ――いやだ、どうしよう。顔を見るのが恥ずかしくなってきたわ。

 ジェイクの口元に甘い微笑みが浮かび、シャロンは思わず俯いてしまう。大広間の暖房が利きすぎているのだろうか。体中がカッと熱くなって、外の風に当たりたいくらいだ。

「えっと。ジェイク、背が伸びたなぁと思って……」

 どうにかそれだけ言うと、彼は「うん」と頷く。

「これからもっと伸びるよ」

 シャロンは目をあげて、背が高くなったジェイクを想像した。彼は周りの正騎士のように立派になることだろう。クロウのように素晴らしい騎士になるのは間違いないように思え、急に彼が遠い人になった気がした。甘やかになった視線が居心地悪い。

「どうしたの? 寂しそうな顔になってる」
「ううん、なんでもない」