ぼくときみ

ここではない異世界に、アズールという王国がありました。

 アズール国は小さな国でしたが、自然豊かで争いごともなく皆平和に暮らしていました

 魔王がいない期間だけは━━


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「あのさぁ、もういい加減にしてくれない?何度来ても僕の気持ちは変わらないから」


「そ、そんなことおっしゃらずに、ど、どうかこの国を、いえ、この世界をお救いください勇者さま」


 まるで神様を崇めるように、神官はひれ伏して懇願する


 その様子をどこか冷めた目で見る僕。

 足を組んだ状態でソファーに座っているまま、ぷいっとそっぽを向く

 これ以上は無理だと察して神官は「また参ります」と言い残して退室した

 神官と入れ違いに今度は《《きみ》》が入ってくる

「またきみか」

ため息をつき足を組み替えて、きみをきつく睨む

「っ!」

一瞬きみはひるむけれど、僕の隣に腰掛ける

「どうしたら一緒に戦ってくれますか?」
「絶対に嫌だよ」

「そうですか、また来ます」
「何度来ても同じだよ」
「そうかもしれないですね。でも私の務めですから」
「あっそ」


きみも大変だねと思いつつ見送る
ソファーからきみは立ち上がり、不遜な態度の僕に一礼して去っていく
ふわりと甘い香りが鼻につく。
だから苦手なんだ。
きみから漂う香りは僕の使っていた柔軟剤の香りと似ているから。
あちらの世界のことを思い出すから。

柔軟剤の匂いと似ていると伝えたらきみはどんな顔をするだろう。
柔軟剤って何?って言うだろうね

ゴロンとソファーに寝転がる
天井には絵画が施されている
魔王と勇者と聖女だ

魔王の心臓を目がけて勇者が剣を突き立てようとしていて、勇者の後ろには聖女が祈りを捧げているという絵だ。

このアズール国に伝わる、いやこちらの世界に伝わる物語だ。