桜とヴァンパイア

まぁ、大抵どこから数えたか分からなくなるのだけれど

この病院に入院している者はそのほとんどが難病に侵され余命宣告を受けた者達だった

いわゆる終末医療に特化した病院━━ホスピスだ

最後のその時まで穏やかに過ごせるようにと、この病院は全て個室となっている


穏やかに過ごしている者が大半だが、時々暴れて看護師に罵声を浴びせる者もいる


どうしようもない怒りなのか、悲しみなのか、生への執着なのか、無性に叫びだしたい時があるのだろう
単なる八つ当たりには違いないのだけれど……



そういう場所であるから、暗闇に見える仄かな光に自然と目がひきよせられたのだ。あの世からのお迎えか、はたまた幽霊なのかと、ついに自分にもその時が近づいてきたのかと目が離せなかった


どのくらい眺めていただろう

その人は消えることなくずっとベンチに腰かけている

幻ではないのかもしれないと思い、桜は備え付けのロッカーから折りたたみ傘を取り出した

日に当たるのが苦手なこともあり、常に折りたたみ傘は持ち歩いていた