初恋の思い出

後ろから付き添ってくれていたお嫁さんが、慌てて駆けつけてくれた。汚れた部分の衣服をはたいてくれたり、抱きしめてくれる。

「継子の尻拭い」

カチンとくる言葉が耳に届く。
勢いよく振り向くと、青木くんはもう一度「━━ママコノシリヌグイ」と、同じ言葉を口にする。

「なんですって‼︎ もう、知らない! 行こう、お嫁さん」

鬼のような形相で、青木くんを睨みつける。

「え、ちょっとあいちゃん、どうしたの?」


もう二度と話しかけないんだから!
なんてデリカシーのない人。

継子……私が一番気にしていることなのに!

それからほどなく、青木くんは退院した。

「あいちゃん、本当に挨拶しなくて良かったの? そうそう、この本をね、あいちゃんに渡してほしいと頼まれたのよ」


私はお嫁さんから花の図鑑を手渡された。

青木くんの両親は、花屋だということ、 何か怒らせてしまってごめんねと言っていたことを聞かされた。

そんなこと別にどうでもいい。

どうでもいいけどっ……退屈だから、そう、退屈だから、図鑑を開いてみることにした。 青木くんがくれた本だから見るんじゃない。そう自分に言い訳をしながら。

その時、図鑑を開いた自分を褒めてあげたい。

開かなかったら、ずっと前に進めなかったと思うから。


それから10年後━━