出張最終日の夜。
ホテルへ戻り、ネクタイを外した瞬間だった。
テーブルの上で、スマートフォンが静かに震える。
画面を見る。
知らない番号。
営業の電話だろうと思い、そのまま閉じようとした。
しかし、届いたメッセージは少しだけ気になった。
「まだ東京にいますか?」
誰だろう。
仕事関係でもなさそうだ。
返信はしなかった。
数分後。
もう一通届く。
「昨日歩いていたあの道、覚えていますか?」
思わず昨日の夜を思い出す。
細い路地。
赤い提灯。
静かな交差点。
そして、不思議と記憶に残った小さな看板。
「誰なんだ……」
少し考えたあと、短く返信した。
「どちら様ですか?」
既読はすぐについた。
だが返事は来ない。
時計を見ると、午後十時五十八分。
あと二分で十一時になる。
その瞬間。
また通知が鳴った。
「午後十一時。」
「昨日の場所で待っています。」
「来るかどうかは、お任せします。」
それだけだった。
ホテルの窓から外を見る。
昼間の東京とはまったく違う景色。
ネオンが静かに光り、人の流れは少しずつ減っていく。
行くべきか。
やめるべきか。
理由はわからない。
それでも、不思議と怖さはなかった。
気付けば上着を羽織り、部屋のカードキーをポケットへ入れていた。
エレベーターを降りる。
ホテルの自動ドアが開く。
夜風が少し冷たい。
昨日歩いた道を、もう一度歩き始める。
交差点を曲がったその時だった。
昨日は閉まっていた小さな店の灯りがついている。
入口には、小さな木の札。
そこには昨日なかった文字が書かれていた。
「ようこそ。」
まるで、自分を待っていたかのように。
彼はゆっくりと、その扉へ近づいていった。
(第2話へ続く)
ホテルへ戻り、ネクタイを外した瞬間だった。
テーブルの上で、スマートフォンが静かに震える。
画面を見る。
知らない番号。
営業の電話だろうと思い、そのまま閉じようとした。
しかし、届いたメッセージは少しだけ気になった。
「まだ東京にいますか?」
誰だろう。
仕事関係でもなさそうだ。
返信はしなかった。
数分後。
もう一通届く。
「昨日歩いていたあの道、覚えていますか?」
思わず昨日の夜を思い出す。
細い路地。
赤い提灯。
静かな交差点。
そして、不思議と記憶に残った小さな看板。
「誰なんだ……」
少し考えたあと、短く返信した。
「どちら様ですか?」
既読はすぐについた。
だが返事は来ない。
時計を見ると、午後十時五十八分。
あと二分で十一時になる。
その瞬間。
また通知が鳴った。
「午後十一時。」
「昨日の場所で待っています。」
「来るかどうかは、お任せします。」
それだけだった。
ホテルの窓から外を見る。
昼間の東京とはまったく違う景色。
ネオンが静かに光り、人の流れは少しずつ減っていく。
行くべきか。
やめるべきか。
理由はわからない。
それでも、不思議と怖さはなかった。
気付けば上着を羽織り、部屋のカードキーをポケットへ入れていた。
エレベーターを降りる。
ホテルの自動ドアが開く。
夜風が少し冷たい。
昨日歩いた道を、もう一度歩き始める。
交差点を曲がったその時だった。
昨日は閉まっていた小さな店の灯りがついている。
入口には、小さな木の札。
そこには昨日なかった文字が書かれていた。
「ようこそ。」
まるで、自分を待っていたかのように。
彼はゆっくりと、その扉へ近づいていった。
(第2話へ続く)
