消えるはずだった予知の巫女は、今日もこの世界で生きている ――異端と呼ばれる騎士さんが、私には綺麗すぎる

広場を巡回中。

たいまつの灯り。
音楽。
人々の笑い声。

その中を歩いていると、
ふと、視界の端に見慣れた姿が入る。

――美桜だ。

ルビーの木の下に立ち、
祝賀の様子を静かに眺めている。

作業着のまま。
いつもと変わらない、
食堂職員の姿だった。

それなのに。

どこにいても、
すぐに見つけてしまう自分に、
レイスは内心で苦笑する。

少しだけ近づいて、
表情が分かる距離まで来たところで、
足を止めた。

彼女の顔は、
どこか楽しそうで――
それでいて、
ほんのわずかに、寂しげにも見えた。

以前のように、
警護として傍にいることはない。

会話を交わすことも、
確実に減ってしまった。

それでも。

彼女がこの世界に存在している。
こうして、姿を捉えられる。

それだけで、
十分だと思うようにしている。

ただ。

時折見せる、
あの表情だけは、
どうしても胸に引っかかった。

――また、消えてしまうのではないか。

そんな不安を覚えてしまう自分を、
否定できない。

けれど。

どれほど不安が積もっても、
彼女をここにとどめることはできない。

傍にいてほしいと、
願うことも、頼むこともできない。

レイスは、
そっと美桜から視線を逸らし、
小さく息を吐いた。

距離は、
以前よりも、確実に遠くなった。

どこか、よそよそしい。

彼女のほうから話しかけてくれることは、
ほとんどなくなった。

――これでは、友人以下だな。

そんなふうに思って、
胸の奥が少しだけ沈む。

それでも。

巫女だった頃の彼女が、
自分に向けていた感情には、
確かに好意が混じっていると、
あの時は思っていた。

「偽りの自分では、気持ちに応えられない」

赤い顔でそう言われたら、
勘違いしてしまうのも、無理はない。

けれど今になって思えば、
あれは同情心が大半だったのかもしれない。

知り合いがいない不安からくる、
一時的な刷り込みのようなものだったのだろう。

それでも。

容姿のこともあり、
愛されることを知らずに生きてきたレイスにとっては、
それが同情だったとしても、
嬉しいと感じてしまうほどの言葉だった。

だから、今は。

ただ、美桜が幸せでいてくれればいい。

そう願うだけで、
十分なのだと、
自分に言い聞かせる。

レイスは、
もう一度だけルビーの木の方を見やり、
そして静かに、その場を離れた。