不器用な彼と青春の雨宿り


 私たちは濡れないように、バス停で雨宿りをしていた。



 「心優って他のやつにはフツーに喋んのに、なんで俺の時は口数すくねーの?」



 雨粒が緑の葉や黒い地面を打ち付ける音の中、拓也の喉から搾り出したような声が耳に入る。



 「???他の人は、異性として意識していないからであって……」



 拓也が聞いてきた意図について、頭の回路をフル回転する。


 もしかして、私のことが……。


 でも、絶対に違う気がする。

 自惚れるな、私!


 斜め右にいる彼のほうを振り向く。



「…………?」



 石のように固まり、ポーカーフェイスになっている。



「拓也……??」



 鋭い目と目が一瞬だけあい、お互いに目を逸らしてしまう。


 なんか、いつもと違う、ような。



「あっ、バス来たよ!」



 カバンを持ち、すぐさま立ち上がる。

 何かから、逃げるように。



「んっ……」



 いつの間にか、目の前には拓也の顔があり、私たちは口付けをしていた。


 バスからは見えないように、拓也の大きな体で覆われる。


 骨のあるゴツゴツとした手に、少し雨に濡れた首筋。


 見てはいけないものを見たかも。



「心優、その……好き、だ……」



 熱い眼差しが、私の全てを射抜く。

 心までも。


「私も、好き……っ」


 彼は嬉しそうに口角を上げ、もう一度口を合わせる。


 二度目は、優しく甘かった。


「バス、行っちゃったけどいいの……?」



「心優のこんなにも耳まで赤くなった顔、他のやつに見せれねーよ。いや、俺が見せたくない……」



 心臓が強く跳ね、鼓動も早くなっていく。


 私、今日から拓也と恋人なんだ……っ。



「拓也っ! 私は拓也の彼女で、拓也は私の彼氏で、カップル誕生??ってことだよね!」



「あぁ、そういう、こと、です……。あと、距離近すぎて、俺が壊れる……っ」



 静かな雨の中、二人は暖かい風に包まれたのでした。