熱く繰り広げられる黒瀬vs久賀野の恋愛談。二人が隣同士に座ると白熱するのも一連の流れ。帰りが遅くなることは間違いなさそうなので、真っ先に弟には連絡を入れておいた。
「おい。なに人の顔見てニヤニヤしてんだよ」
「いいお酒のアテがあるからね」
「え。今日はノンアルじゃねーの? 二人も介抱できねえぞ俺」
「嘘嘘。普通の烏龍茶だよ」
コーヒーのみならずアルコールに拒否反応を起こす私の体は、少しでも飲もうものなら外に出そうと急激な吐き気を連れてくる。そのせいで、過去にどれだけ迷惑をかけたことか。
「だって勿体ないじゃない。こんな面白い話が聞けるのに、お手洗いから出てこられなくなったら」
「おい。人の振られた話がおもろいだと?」
「まあ久賀野の話はウケるよねー。学習しないっていうかー」
「それそっくりそのままお前に返してやるよ」
「熨斗付けて送り返すわ」
「いるか。返すな」
速いテンポには一生付いていける気はしないが、それでも彼らには決してそうは思わない。
会話に入れないと疎外感を感じることもあるけれど、彼らの場合は、聞いているだけで非常に心地よい空間に思える。この関係でいられることが、私にとってはとても大切なことだった。



