そうして長部龍生は、もう一度彼女に会うためだけの力を得た。
幾度となく無慈悲な世界を渡り歩き、彼女の姿を求めて今日もまた、この青い空を千切っては空の向こう側にある世界へと旅に出る。
彼女を捜していくつもの世界を渡り歩いた彼は、様々な人や人ならざる者たちと出会い、そして多くの感情と向き合っていく。
……十、百、千。
どれだけの空を千切ったのか。本来の目的すら、自分という存在すらわからなくなっていた頃、彼の目に一人の女性の姿がガラス越しに映り込む。
『……ああ、そうだ。僕は、彼女の笑顔が見たくて』
彼はそこでようやく理解した。やっと、願いが叶ったんだと。
彼の心の強さを描きながら、表裏として文面に溢れてくる異様な愛情。恐怖を覚える部分はあれど、それでもどこか切ない。
どれだけの困難が立ち向かおうとも諦めない長部に、どれほどの読み手が心を奪われただろう。彼の意志の強さに、引き寄せられたろう。勇気を、もらえただろう。背中を押してもらえただろう。
ようやく願いを叶えられた彼に、どれだけの人間が涙を流したことだろうか――――。



