「前に、出版社に姉がいるとか言ってたような気がして。あ、前って言っても本当に随分前だけど」
(宵くんが、学校で私の話を?)
「普通に学校行ってれば今頃大学生してるんだけど、僕引き籠もりだから」
(それ、普通に反応に困るやつ)
「今年は多分卒業できるよ。引き籠もるのも飽きてきた頃だし。オネーサンの弟クンにも興味湧いたし」
「仲良くしてもらえたら嬉しいです」
「僕はオネーサンとも仲良くなりたいな」
「それは勿論。担当である限りベストを尽くします」
「そうしてもらえるのは有難いんだけど、今僕が言いたいのはそういうことじゃないんだよね」
そう言って彼は、両手の指を組んだ上に顎を乗せ、口元ににっこりと笑みを作った。
「仲良くなりたいって言うのは、もっとオネーサンと個人的な話がしたいから。たとえば……そう、古葉龍青の話とかね」
「!」
人を試すようで、どこか挑戦的。僅かに見えた前髪の間からそんな視線を寄越した彼は、こちらの反応を確かめてから口角を上げた。
「オネーサンの話を聞いて、ピーンときたんだ」
「……な、にを……」
「オネーサンでしょう? 千切った空の向こうの世界。【青い空】で、最後に主人公――長部 龍生が見つけた最愛の女性」
――――喫茶店の彼女、ってさ。



