茶化すこともせず、ただ真剣に話を聞こうとしてくれる姿勢が嬉しくて、気付けば笑みを浮かべていた。
「何かおかしなこと言った?」
「いえ。何でもないんです」
ただ少し、知り合いに似ているなと思っただけだ。
そうしていると、壁の向こうから「あの~。すみません~」と、新堂が申し訳なさそうにひょっこりと顔を出した。
「仕事でミスっちゃって。今すぐ本社に戻って直さないといけないみたいで……」
「そ、それは大変。こっちは大丈夫から急いで戻ってください」
「すみませ~~んっ!」と、脱兎の如く姿を消した彼は、高校では陸上部。しかも短距離走の選手だったと言っていた。今度、締め切りぎりぎりの原稿を投函しなければいけなくなった時は、彼に頼むことにしよう。
「それでは雪ノ平先生。そろそろ私もお暇させていただきますね」
また何かあればこちらに連絡くださいと、名刺を渡したところで「やっぱり」と彼の口から洩れた。
「オネーサンもしかして弟いたりしない? 高校生の」
「……どうして、そのようなことを?」



