「私共としましては、先生には執筆していただければそれだけで十分。大変助かります。売れる作品なら尚のこと。でも私個人の意見としましては、何事もほどほどが一番かなと」
「は?」
「自分がやりたいこと、自分が本来すべきこと。自分の枠からはみ出すようなことは、無理にするべきではないというのが私の信条な――」
その時、誰かのスマホが爆音で鳴り響く。全員で椅子をガタガタッと揺らして驚いたあと、「すす、みませんっ!」と新堂が慌てて席を外した。
「び、びっくりしましたね」
「ねえ」
「はい」
「さっきの話って、実体験? 妙に重みあったけど」
あそこまで話しておいて、ここで隠す意味もなければ、嘘を吐く技量もない。
「私、正社員じゃないんです。ただのアルバイトで」
「え?」
「ご不安にさせてしまい申し訳ありません。その代わり、新堂はちゃんとした社員ですし、仕事はきちんとしますので」
「それで?」
まるで、その先に答えがあるのを知っているかのように、彼は頬杖を突きながら少し興味を持った顔付きで先を促した。
「社会人になると、いろいろあるんですよ。高校生に聞かせるような話ではありません」
「高校生の前に、僕は一人の作家だ。ネタはどこにでも転がってる。いいきっかけも、それこそいい気分転換もね」
それを、小さく口元に笑みを浮かべる目の前の彼に提案したのは、他でもない私だ。



