何かを考えている様子の彼にそう切り出すと、相変わらず目元は見えないが、それでも端から見てわかるほど嫌そうな顔をされた。
「受け取りたくないなあ」
「何か理由がお有りなのですか?」
「大体何書いてあるか想像付くから」
それでも渋々受け取ってくれた彼が手紙を読んでいる中、新堂と再び首を傾げていると「んなことだろうと思ったよ」と。雪ノ平は面倒くさそうな顔をしながら、後頭部をボリボリと掻く。
(あ)
「ん? ああ、ごめんなさい。見る? 手紙」
言いながらすでに見せてくれていた手紙には、デカデカとこう書かれていた。
【快慶へ
迷惑をかけないように】
とても親しげな内容に、再び首を捻る。
「ああ。流石に言われないとわからないよね」
そう言った彼は、そのあとすぐ玄関先に置いてあったボールペンを使って、手紙に何かを書き込み始めた。
「YUKINOHIRA ERIKAっていうのは、アナグラムで作った名前なんだ。本名は……」
そして「こうした方がわかりやすいでしょ」と、彼が綴ってくれた文字に、私たちは言葉をなくした。
「龍ノ平 快慶。どーも、いつも兄がお世話になってます」
「……龍ノ平編集長の」
「弟さん……?」
「因みに、二十歳越えてるけどまだ高校生だから」
「男子高校生で?!」
「プロの小説家?!」
「「流石は龍ノ平家の血筋!」」と揃った声に、「オネーサンたち面白いね」なんて、男子高校生に笑われてしまった。



