「雪ノ平 愛梨花先生。昨年行われた読書の秋コンテストにおいて最優秀賞を受賞。小説家デビューを果たし、現在は受賞作【碧落の騎士団-蒼龍の剣-】の続編を執筆中」
「確か、社内でも話題になってたファンタジー小説ですね」
「都心在住の二十歳。ということは現役の大学生ですかね」
「大学生かあ」
ふと、自分が大学生だった頃のことを思い出す。とにかく出無精で、勉強かバイトか、ゲームばかりしていたっけ。
(あの頃は、私も立派な社会人になれるだろうって、疑いもしなかったな)
小さな悩みを抱えながら、私たちは新しく担当することになった雪ノ平の自宅を訪れていた。
「909、909……あ、ありましたよ。ネームプレートの文字擦れてますけど、辛うじて【ノ平】の文字は見えますね」
これは恐らく、家族も誰も知らないこと。実は私自身も、最近になって気付いたことである。
「それじゃあ押しますね」
「き、緊張しますね」
「最初が肝心ですよ」
「わ。流石青崎さん!」
――私は、癖のある人見知りだ。



