その日、18時から新たに始まるオンラインゲームのイベントに参加する約束をしていた私は、何が何でも残業するわけにはいかなかった。それはそれは死に物狂いで仕事をこなし、出遅れを取り戻すため、唯一のフレンド『女竜騎士』と協力して敵を倒していく。
「ちょっ、待って待って! このガーゴイル無駄に強くない!?」
『あー、確かイベ詳細にそんな奴もいるって書いてあった気がする』
「マジかい」
『遭遇率超低めの、レアアイテム所持率超高め』
「絶対倒す」
『先に周りの雑魚倒そ』
了解しました、とヘッドマイクに返事をしながら、キーボードの小気味よい音を立てて敵を殲滅していく。
二人で倒した強めのガーゴイルは、女竜騎士がずっと探し求めていた超レアアイテムを落としてくれて。イベント真っ最中にもかかわらず、一人達成感で満たされた。
『ちょっと休憩する?』
「するー」
ぐーっと伸びをすると、バキバキバキッと首やら背中やらが盛大に鳴る。時計を見ると、もうすぐ日付を跨ごうとしていた。思ったよりも長い時間、ゲームに没頭していたらしい。
スリープモードをかけてから、静かに部屋の扉を開け、忍び足で台所へ。開けた冷蔵庫に入っていた牛乳をジョッキに注ぎ、腰に手を当て一気に飲んだ。
「プハッ。たまらん」
ひと仕事終えたあとの牛乳の、何と美味しいことか。



