「……伊代」
「私ね、よく変な夢を見てたの」
「変な夢?」
「いろんな世界にいる私が、悉く消滅していく夢」
「…………」
「最近はめっきりその数も減ってたんだけど、ついさっきまた、変な夢というか、記憶を思い出して」
草木香る風を浴びながら壮大な野原に寝転がって、入道雲と飛行機雲、それから眩しい太陽に青い空。
それを、誰かと見ていた記憶だと、彼女は言う。
目が慣れた頃に、そっかと一言そう言うと、溢れんばかりの涙を溜めながら「また、そうやって黙ってるつもりだったんでしょ」と彼女はなじった。
「だって、俄かには信じられない話だし」
「あなたはそれを本にしたんでしょう?」
「伊代。俺は」
「またそうやって、本当のことは言わないつもり?」
「違う。俺はただ」
「ちゃんと。一から説明して。長部」



