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“父さんに免じて出て行けとは言わねえ。でも、余計なことはすんな。迷惑なんだよ”
冷たく言い放った言葉が、耳の奥にずっとこびりついて離れない。
「宵?」
「……ああ。なんだ、帰ってたんだ」
おかえり父さんと、夕食の準備をしようと腰を上げる。体調が悪いようにでも見えたのか、額に父の手が触れた。
熱がないのを確認すると、「何かあったのですか」と父は尋ねる。だから答えた。別に? と。
「では、伊代さんと何か?」
「別に。あいつは関係ねえ」
「なら伊代さんに話を伺っても問題ありませんね」
「……問題あるからそっとしといてやって」
父はいつも目聡かった。仕事柄、家を空けることも多いのに、それでも子供たちの成長を、変化を、逐一見逃しはしなかった。
何せ父は、こちらが何かを言う前から、彼女の瞳のことに気が付いていたのだから。
「それで? 伊代さんに何を言ったのですか」
「向こうが何か言ったとは思わないわけね」
「では伊代さんが何か言ったのですか?」
「もう一回頑張りたいんだとよ。家族として」
「それはそれは。伊代さんが大好きな宵くんには、相当堪えましたね」
「――ごほっごほっ」
“父さんに免じて出て行けとは言わねえ。でも、余計なことはすんな。迷惑なんだよ”
冷たく言い放った言葉が、耳の奥にずっとこびりついて離れない。
「宵?」
「……ああ。なんだ、帰ってたんだ」
おかえり父さんと、夕食の準備をしようと腰を上げる。体調が悪いようにでも見えたのか、額に父の手が触れた。
熱がないのを確認すると、「何かあったのですか」と父は尋ねる。だから答えた。別に? と。
「では、伊代さんと何か?」
「別に。あいつは関係ねえ」
「なら伊代さんに話を伺っても問題ありませんね」
「……問題あるからそっとしといてやって」
父はいつも目聡かった。仕事柄、家を空けることも多いのに、それでも子供たちの成長を、変化を、逐一見逃しはしなかった。
何せ父は、こちらが何かを言う前から、彼女の瞳のことに気が付いていたのだから。
「それで? 伊代さんに何を言ったのですか」
「向こうが何か言ったとは思わないわけね」
「では伊代さんが何か言ったのですか?」
「もう一回頑張りたいんだとよ。家族として」
「それはそれは。伊代さんが大好きな宵くんには、相当堪えましたね」
「――ごほっごほっ」



