「正直言うと、いっぱいいっぱい」
ゆっくりと抱擁を解いた彼と目が合うと、照れくさくなったのか、また彼は私の肩に額を置くようにして逃げた。
「俺はさ、いつだって、お前と姉弟だったことをずっと恨んでたんだよ」
でもお前は、俺の姉でいることを、俺が弟でいることを、本当の家族になることを望んでた。なんて理不尽な運命なんだって、どれだけ長い間苦しんだかわかんねえ。
それでもなんとかこの気持ちに折り合いを付けて、お前のことをずっと応援しようって。その代わりに、俺ができる精一杯を、お前のためにしてやろうって……。
「おもって。たのに……」
彼は、小さく息を吐いた。
少しだけ、震えていた。
「結衣子さんによく言われてた。お前のことを頼むって。そばにいてやってくれって。結衣子さんが望んでた形じゃねえだろうけどな」
「お母さんは気にしないよ。もし気にしてたら逆に驚くよ」
「今でも、夢なんじゃないかって思う。正直信じられねえし、正気かとも思うし」
「宵くん……」
「だから今は、お前が俺のことを見てくれてるってだけで、いっぱいいっぱい」
「そっか」



