ぎしり、微かに後ろのソファーから音が鳴る。
その直後、左手の小指があたたかくなった。
「約束。お前が嫌がることは、もう絶対にしない」
次に、左腕の外側があたたかくなる。
左肩が重くなった。首に当たる彼の髪がくすぐったい。
「これ。何の匂い? 甘いの」
「ほ、保湿クリームかな」
「なんで今日は付けてんの」
「さ、最近乾燥が酷いから」
乙女心を守るためにそう伝えると、「女ってのは大変だな」と、彼は素直に受け取っていた。
眠たいのか、少しだけ甘えん坊の彼にそっともたれかかってみる。彼から自分と同じ匂いがして、胸がきゅうっと甘く締め付けられた。
「言いたいこと。もう一つだけ、いい?」
「悪口はもう締め切ったぞ」
「私ね、糸ちゃんにヤキモチを妬いていたの」
「……は?」
「あの時は逃げちゃったけど、宵くんに一石さんや他の人を薦められたことも、本当は嫌だった」
「……お前なあ」
離れていってしまった体温に寂しさを感じていたのは一瞬。繋がっていた小指を引っ張られたかと思ったら、いつの間にか彼の胸の中に倒れ込んでいた。



