『綺麗だった』という言葉に思わず照れていると、「どうして切ったんだよ。まさか失恋?」なんて言うから、笑って答えた。手入れに飽きちゃってと。
「ふーん。女っていろいろ大変なんだな」
「それと、これはここだけの話なんだけど」
「ん?」
「会話の種になったらいいなとは、ちょっと思ったりしたんだよね」
もしかしたら彼は覚えていないかもしれないが、肩で切り揃えた髪型は、彼に出会った時と同じ髪型。全く会話のない生活から少しでも抜け出したかった、ただの足掻きでもあった。
結果としてそれが話題に上がったのは、肩に当たるまで伸びた挙げ句、豪快に外跳ねをしている今だけど。
「でも髪を切ったら、気持ちが軽くなってね。だから結果オーライだったよ」
「それは、遠回しに俺の悪口を言ってんのか」
「わ、悪口じゃないよ? 宵くんにだって、悩みの一つや二つあっただろうし」
「ほんとかよ」
笑いながら疑いの視線を向ける彼には、苦笑いを返すことしかできなかった。
「本当はね、ずっと聞きたかったんだよ。宵くんが悩んでること、吐き出して欲しかった。そうしたら少しはスッキリするんじゃないかなって」
「伊代……」
「今でも頼りないお姉ちゃんで、ごめんね」
「……ばかだろ」



