“――ここまでけしかけられても何も思わないというなら、いつまでも龍青に囚われたままでいればいい。その方が僕としても有り難い”
そう。結局は、龍青に囚われたままだったんだ。
ただ、彼に同調しただけ。彼の担当だったから。彼の気持ちが、痛いほどよく伝わってきたから。
だから、今胸が痛いのも、涙が出てくるのも全部。ぜんぶ、そのせいで……。
「ぜんぶ。おれのきもちなんかじゃ……」
「イックン? 帰ってる?」
すっと、息を押し殺した。
けれど、いることはどうやらバレていたようだ。それもそうだ、玄関に靴があっただろうから。
「晩御飯買ってきたけど、一緒に食べる?」
「……いや、俺はいいよ。仕事で疲れたからすぐ寝るわ」
それに、こんな情けない姿、弟に見せられはしない。
「あ、そう? じゃあ扉越しでいいから聞いて欲しいんだけど」
「よっこいしょ」と座る気配がした後、ちいさく「イックンごめんね」と声が聞こえた。
それが、何に対する謝罪なのか。正直心当たりがありすぎて、泣いたあとの頭では正解にたどり着くことはできなかった。
「昨日ね、ピヨちゃんに会ったんだ」
「打ち合わせだろ?」
「うん。その時にどうやら僕、ピヨちゃんの背中を押しちゃったみたいで」
「まさかお前に、人の背中を押す気概があるとはな」



