「それだけが理由かと聞かれれば、そういうことでもないんだけど」
授賞式ができるなら、どんなことでもやった。使えるものはとことん使った。それが、たとえ青崎伊代自身であっても。
従弟には、申し訳なかったと心から思っている。彼女を守ると約束していたのに、それを上から抑え付けて言うことを聞かせたのだから。
……その結果、彼女の心と従弟の心がどうなるか、わかっていながら。
佐裕子は「そんなことよりも!」と、野田の背中を強く叩いた。自分が手を痛めただけで、野田は何ともなかったようだが。
「しっかりしてよ。青崎伊代は生きてるのよ」
「……わかってるさ」
「わかってなさそうだから言ってるんだけど」
「わかってる。でも、確かにこの目で何度も見たんだ」
彼女が、自らの意志でその命を絶っていったところを。
「俺には、どうすることもできなかった」
「でも、今は違うじゃない」
「だからと!」
「わかってるの? 今のあなたの精神状態、この世界の伊代ちゃんには物凄い迷惑」
「んなもんわかっとるわい」
「わかってないわよ。今のあなたは、生きてる伊代ちゃんよりも死んだ伊代ちゃんのことしか見ていないんだもの」
消滅していった彼女たちを、思うなとは言わない。悔やむなとは言わない。悲しむなとは言わない。
だけど、後ろを振り返るくらいなら、前を歩いている彼女のことを、今度はちゃんと守ってあげたらいいじゃない。



