夕方。屋上に一人佇む寂しげな背中に、龍ノ平佐裕子は声をかけた。
「ただいま。柳一さん」
何の反応も寄越さない野田柳一に、佐裕子はもう一度声をかける。
「ただいま。大地の橙さん?」
慌てて振り返った野田柳一――もとい大地の龍は、確かめるように尋ねた。
「……夜さり、の……」
「随分待たせて、心配させてごめんなさい」
そう言って龍ノ平佐裕子――夜さりの白龍は、野田の隣まで歩いて行き、フェンスの向こう側を見つめる。
「あの時てっきり、私と黒龍は消滅したと思ってたのに」
「潮騒のが、お前らの魂の欠片を何とか回収したおかげだ」
「そっか。藍龍ちゃんが頑張ってくれたのね」
「いつだ」
野田は尋ねる。
いつから思い出していたのか。自分が人間ではないと気付いたのかと。
「……怒らない?」
「怒るようなことなのか」
「十五年前でも?」
「――?! お前、なんでずっと黙ってた!」



