青い青い空


 不運なのか強運なのかわからないなと呆れながら、久賀野はここが大罪人が罪を犯した場所だと確認する。

 もう一度振り返って、「帰れるぞ」と答えた。


「あ、そう? よかったよかった」

「何か伝えておくことは」


 常に生意気で、常に困らされてばかりだった。けれど彼女――黒瀬雅という侵入者(クラッカー)がいなければ、もしかするとこの世界でも青崎伊代は、消えてなくなっていたかも知れない。

 たとえ侵入者であったとしても、彼女が青崎伊代の心の支えとなったのは、紛れもない事実だった。


 人間の少女を助けたことも、その少女が侵入者とわかっても放置したことも、またこうして帰ることを手助けすることも、今までの自分では考えられなかったこと。規律を重んじ、規則に従うことこそ全てだったはずなのに、神の掟を破ってとうとうここまで来てしまった。

 けれど、一度やってしまえばあとは同じこと。ならば、最後まで見届けるのが筋というもの。別れを言わないのであれば、せめて自分が代わりに、彼女へその言葉を伝えておこう。

 そう思って、声をかけたはずだった。


「……黒瀬?」

「普段のあんたはほんとしょうもないけど、神様のあんたはまあまあだったわよ」


「それじゃあね!」と、彼女はあっさり元の世界へと帰っていった。久賀野の頬に、やわらかい感触を残して。