雲の上でさえ相変わらずの言い合いをしていた二人の視界に、きらりと何か光るものが見える。そこへ向かってゆっくり下降し、緋龍の姿から人間の姿へと戻った久賀野は、黒瀬の体をそっと抱き抱えながら降り立った。
「あ。ここここ。片割れのあんたの鱗があるから間違いないわ」
「お前な、龍の鱗なんだと思ってんだよ」
「目印?」
「俺はそんなことのために二枚も鱗剥いでやったわけじゃねえんだけどなあ」
「まあいいじゃない。おかげであたしは元の世界に帰れるわけだし、あんたももうこんな面倒な奴の世話をしなくて済むわけだし」
「だな。そればっかりは正直言ってありがてえ」
赤い鱗が埋め込まれていた大木に、久賀野はそっと手を翳す。鱗が挟まっているおかげか、まだ完全に世界の入り口は閉じてはいなかった。
……まさか、彼女はここまで計算してやってのけたのだろうか。
久賀野は振り返って黒瀬の方を見てみるが、彼女は「まだー?」と至って暢気だった。



