肌が粟立つのを感じる。目の前の碧龍が、怒りをあらわにしているからだ。
これ以上の遠回しは互いのため、そして彼らのためにもよくないと白状する。
「僕はただ、彼との約束を守ろうとしただけだけに過ぎません」
龍の神たちと同じく人間たちの世界に潜り込み、いろいろな姿で彼女を傍で見守り続けた。
ただ、彼女を陰から見守っていた自分を、不審に思った橙龍に問われたことがある。
『お前は、何がしたいのか』
彼はきっと、ブレース右京という人物の正体に気が付いていたのかもしれない。
「これは完全に僕の勝手なエゴなのですよ」
命を刈り取ることを誰も歓迎しようとはしない。ましてや感謝など、一度たりともされたことはなかったのだ。
でも彼は――古葉龍青だけは、はっきりと言ったのだ。『ありがとう』と。
だから、橙龍に言われて、ようやくわかった。
「僕は、その言葉が心底嬉しかったのだと。だから、彼との約束を守ろうと思ったのだと」
「それでも僕の問いには答えてないって、わかってるでしょ」
「大変申し上げにくいのですが、こればかりは碧龍殿にもお伝えしかねる問題でして」
「なら伝えられる限界を、一番シンプルな言葉で言ってよ」
それならばと、僕はすぐに答えた。
「ずっと、捜している方がいました。それだけです」
その方を見つけるのに、十五年ほどかかってしまっただけですよ。



