彼女の願いはただ、青い空にかかる大きな虹が見えるようになること――それだけだった。
己と彼女の残酷な運命を知った大罪人――古葉龍青は、その願いを叶えるため、その命を死神へと捧げた。【青い空】を執筆し、そして【青い青い空】と題した日記のような恋文を残して。
「その時には【青い青い空】はあったってこと? それなのに、どうして今になって表に出てきたの」
「古葉龍青は、死神に三つの頼み事をしました」
一つ目は、自身の身に起こったことをまとめるだけの時間をもらうこと。その結果が【青い空】の執筆に。
二つ目は、己という存在が消滅した後で、それを確かめたいというもの。
「実家のおばあさん家へ確認に行ったんでしょ。あの言い伝えが残ってる田舎の。唯一正しく伝え残してる大地主の」
「古葉龍青がこの空全てから去ったあと、彼の姿形を真似、そして彼の魂を連れてそちらへ向かいました。屋敷の広間に残った風景は、彼の魂が成仏した象徴とでも言っておきましょうか」
「それで? 三つ目は?」
「それはもうご存じでしょう。彼も書き残したのですから」
自分ができない代わりに、彼女の傍で見守っていてくれと。
僕が願いを叶えるところを見ていてくれ――と。



