神の力を得た人間の、空を千切った数が千を優に越えた頃。潮騒の龍は全てを哀れんでいた。
無駄を嫌う翠龍も、今までの時間を崩され嘆いた紫龍も、人間に怒り狂っていた緋龍も。呆れるだけの傍観者でいたはずのあの黄龍でさえ、彼女の運命の渦に飲み込まれてしまったから。
『潮騒の。人間は、なんと無力か』
愚かだと蔑んでいた大地の龍もまた、その一つ。
『だが、もっと無力なのは我々だ』
『橙……』
『人の世に、我らが関与することはできん。だが、これはあまりにも酷すぎる』
何度も何度も、少女は世界に殺された。
少女の優しい心は、残酷で無慈悲な世界に堪えられなかった。
少女が自ら、その命を放棄することさえ、我々にはどうしてやることもできなかった。
『どうしてこの世界は、真っ当な人間が損するようにできているのだ』
橙龍はただ、己の無力さに涙を流すしかなかった――。



