その時、屋上の扉が大きな音を立てて開かれた。振り返ると、衝撃で外れた扉の横で、馬鹿力の持ち主が膝に手を突いて息を整えている。
「の、野田さん? 一体どうし――」
「――あおさき!」
その直後、私の体は叫びながらぶつかる勢いで駆けてきた野田に、思い切り抱き潰された。
「ちょ。のださん、くるしい」
「だめだ、あおさき。はやまるな」
「……えっと。早まってませんけど」
「おまえまでいなくなったら。おれはもう……」
筋肉質の大きな体躯が、まるで寒さに凍えているかのように震えている。
大丈夫だと、安心させるように何度も答えながら、震える彼の体をさすった。
「いつもの拳骨のお返しですよ。少しやり過ぎた感は否めませんけど」
こんな様子の野田を見ても、ただ右京は笑っていた。いつもの、意地の悪い表情で。
「恐らく彼は何も言わないでしょう。だから、どうかあなたも何も聞かないであげてください」
ただもう少しだけ、そうしてあげていてくれればそれで十分ですから。
そう言って、彼はスマホを取り出し、どこかへ連絡をしながらこの場を去って行った。



