フェンスまで近付いた私は、笑って答えた。
それだけは、絶対にできませんと。
「古葉龍青に会いたいと思っていたのでは?」
「そうですね。でも、今は不思議とそうは思わないんです」
そっと、自分の胸に手を当ててみる。小さな鼓動が、ちゃんと生きていると教えてくれた。
彼がその命をかけて掻き集めてくれた、たった一人――青崎伊代の小さな命を。
「それに、そんなことしたら、それこそ古葉さんは会ってくれないと思いますし」
命をかけてまで救わなければならないような、大それた人間では決してない。
だからこそ、大切に生きなければならないとわかったんだ。彼の分まで。
はっきり伝えると、彼は「そうですか」と笑った。眉尻を下げながら。多分、心から嬉しそうに。
「それを聞いて安心しました」
「あの、そもそもどうしてここへ?」
「強いて申し上げるなら、あなたが彼に思うことがあるように、僕にも彼に思うことがあるということです」
「あんまり答えになってないんですけど」
「あなたがその気なら、こちらもできうる全ての手を打っておいて損はないでしょう」
「……あの。ですからそれは、どういう意味で――」



