「古葉さんは、心臓発作が原因で亡くなったのではなかったのですか」
「青崎さんの仰るとおり、最後に心の臓を止められた古葉龍青は、誰に看取られることなくこの世を去りました。だから正確には、ここで亡くなったのは彼ではありません」
「古葉さんではない誰かなんて。そんなの……」
「彼はね、ここで見つけたんですよ。九色に輝く虹を」
当時二十二歳。青崎伊代の七回忌が行われた後、喪服姿のまま無我夢中で探し回った。
そして躊躇いなく――まさにここから、虹の根元へと飛び立った。
「彼が願ったのは、あなたが生きていること。幸せそうに笑っていること。勿論それは、彼が生きていた世界線でのあなたのこと」
神も、死んだ人間を生き返らせることはできなかった。
だから、あなたであってあなたでないものを宛がわせた。
それが、神にできる限界だった。
「しかしどの世界線においても、十六で命を落としたあなたに、彼の精神は壊れていきました。もしかしたら、死の神に願いを請うた時すでに壊れていたのかも知れません」
残酷な運命を知った彼は、全ての世界線から消滅することを決意した。
最後に、あなたが死んでしまうという運命を、その命をかけて覆すために。



