くすりと笑いながら「魔法使いなのでしょう?」と。彼は、渡り廊下を歩き、エレベーターに乗り、階段を上っていく。
その間、不思議なほどに誰とも擦れ違うことも、かち合うこともなかった。
「今更ですが、僕の名前は右京ではありません。正確には、ファミリーネームではないと」
波のように押し寄せてくるネタバレに、頭を抱える余裕すらなかった。一つ一つ、わからないことをやさしく教えてもらえているはずなのに、何故か気味が悪くて仕方がない。
「本名を、『Blaise 右京』と言います。名刺は必要ですか?」
「……今は、もらえるほどの余裕はありません」
「そうですか」と、彼は笑った。「そうだろうと思った」と、存分に顔に書いて。
「因みに、一応僕も同盟者候補ですよ。加入するつもりは一切ありませんけどね」
「……え?」
けれど彼は、それ以上は何も言わなかった。目の前に、〈立ち入り禁止〉と大きく書かれた扉が現れたから。



