どこへ向かおうとしているのか。黙々と前を歩くその背中が別人のように見え、慌てて声をかける。
「この場所、覚えておられますか」
足を止めた彼が、振り向かないままに問いかけたのは自販機の前。
あなたと初めて会った場所? と答えると、彼は「少し違いますね」と返した。
「初めて会話をした場所です」
「初めてお会いしたのは?」
「あなたにもあるように、僕にも特等席くらいありますからね」
再び歩き始めた右京は、やはり振り向かないままに、ぽつりぽつりと話し始める。
「『色』というのは、あなたの全ての指に絡まる色糸のこと。『気をつけなさい』と言ったのは、あなたが、あなたの思っている以上に多くの人に愛されてたからです」
「愛されているのに気をつけろと?」
「彼らが直接原因になることは滅多にないでしょうが、それでも可能性は零ではなかったので」
「何の可能性だと?」
「たとえば、歩道橋から転がり落ちそうになったり」
「――――」
「たとえば車に轢かれそうになったり。いろいろですよ」
「右京さん、あなたは一体……」



