久々に冴えた回答をしたと思ったのだが、残念ながらそれは全力で否定された。
「おい。何回告りゃいいんだ俺は」
「だから、お断りしてるでしょいつも」
「された覚えはねえぞ」
「今しました。私のことはどうぞ諦めてください」
じと目でしばらくの間睨まれたが、それについてはパパッとあしらっておいた。
「それで、何の報告?」
「うん。実はあたし、今年度で退社するの」
思いがけない衝撃に、嘘。どうして? と、涙でくぐもった声が漏れる。
「元の世界にね、帰ろうと思って」
「黒瀬ちゃん……」
「嘘みたいだけど、それが理由。青崎ちゃんには、ちゃんと伝えときたかったんだ」
「……そっか」
私には、それ以上何も言うことはできなかった。
「早く、お兄さんと再会できるといいね」
「ほんとにね。鬼のくせして捜しに来ないんだから」
それでも何も言えない、言わないのは、その不可思議に似た渦中に、もしかしたら自分もいるからかもしれない。だから、今の私にできるのは、精一杯彼女を応援するだけ。
「毎日同期会しようね」
「いえーい! 青崎ちゃん最高!」
「毎日介抱する身にもなれよ!」
そして、残された時間をめいっぱい楽しむだけだ。



