だから、なんだか離れがたくて――そう言うと、目の前から伸びてきた不器用な手が、まるで壊れ物に触れるように涙を拭っていった。
「なら、満足するまでいればいい」
「うん。でも、まだ仕事が残ってるから、もうちょっとだけにするね」
「いいじゃん。たまには仕事もさぼったって。くそ真面目なんだよお前は」
「だって、今日は念願の表彰式が」
「知らねえよそんなもん。お前の方が大事に決まってんだろ」
「宵くん……」
ありがとうと言うと、「うるせえ」と返ってくる。
宵くんは大丈夫なの? と尋ねると、「さっきまでサボってた奴に押し付けてきた」と。
糸ちゃんいい子だねと笑えば、「どこがだよ。あの腹黒の」と。
そういえば、どうしてここにいるってわかったの? と聞けば、「その腹黒のせいだよ」と。
【青い空】のおかげか、今なら思っていることを何でも言える気がした。これからのこと、将来のこと、仕事のこと。
「授賞式が終わったらね、伝えるつもりなの」
「何を?」
「一石さんに、私の気持ちを」
それから、この胸を占める思いも。



